1.自分のケア(セルフケア)

(1)メンタルヘルス不調の原因

多くの人は「ストレス」というと悪いものとして考えていますが、実は、適度なストレスはモチベーションになったり、気分を良くする効果があります。しかし、ストレスが重なると、心や体に悪影響を与えるものになるのです。

アメリカの学者・ホームズとレイは、結婚や配偶者の死などのライフイベントによるストレスを点数化して評価する方法として「社会的再適応評価尺度(SRRS)」を発表しました。この研究から、過去一年以内に一定の強度のストレスが重なると、比較的軽いと思えるようなストレスでも高い確率で病気を発症する、ということが分かりました。うれしいことも悲しいことも楽しいことも、人にとってはストレスになるのです。

職場のメンタルヘルスマネジメントといっても仕事に起因するストレスに対処することだけに限りません。あらゆることが人にストレスを与えていますから、ストレスをため込まない、解消する工夫をすることが大事、と言えます。

(2)ストレスにどう対処するか(ストレスコーピング)

例えば、仕事で嫌なことがあったとき、バッティングセンターで思い切りバットを振るという人もあれば、カラオケで歌いまくる、という人もいるでしょう。大切なお客様に初めて会いに行くときには、お気に入りのネクタイを締めていく、と決めている人もいます。場面や条件によっても対処法はいろいろあるものです。

このようなストレス対処の方法は、大きく2つに分けることができます。

  1. ストレスの原因そのものを変化させる(問題焦点コーピング)

    テレビの音が大きくて勉強に集中できない場合、テレビの電源を切るなど、その原因そのものに働きかけてストレス状態を解消しようとする方法

  2. ストレスに対する考え方を変化させる(情動焦点コーピング)

    雨が降って面倒だ、と思うとき、街のホコリや塵が落ち着いて空気がキレイになる、と考え方を変えてストレスを軽くする方法

状況や相手を変えるのは難しいので、上手に 2.の方法を使えるようになると、気持ちを楽にしやすくなります。


例えば、1個1万円の高級なマスクメロンをもらったとします。あなたの内心はどう反応しますか?

  • こんな高級なものを頂くなんて、自分を大事に思ってくれているんだな、ありがたい
  • やった!今日は高級な美味しいメロンを大人食いするぞ!
  • 一人でこれを食べるのは多すぎるな。美味しいうちに食べきれるだろうか
  • メロンは切って食べないといけないが、皮や種の処分が大変だ
  • こんな高級なものをくれるなんて、気を付けないと面倒を押し付けられるぞ

どれも、1個のメロンをもらった、という事実は同じですが、人によって、もらった状況によって感じ方が変わります。

はじめの2つは、ポジティブな感想ですが、残りの3つはネガティブな感想です。どれが良いとは言えませんが、一つの事柄を様々な角度で見ることができることはおわかり頂けるでしょう。ネガティブな見方ばかりだと、他のこともネガティブに捉えがちになり、結果として気持ちは疲れやすくなります。

ネガティブだな、と思ったら、ポジティブに考えたらどうなるか、想像してみて下さい。
仕事や人間関係のストレスも、別の角度でみると、和らげることができることもあります。

(3)睡眠時間と集中力

近年、睡眠の大切さが見直される場面が多くなりました。

EU連合では、勤務間インターバル制度、という労働基準を定めています。具体的には、勤務終了時間から次の勤務開始まで11時間を置かないと出勤させてはいけない、というものです。これにより、労働者の休息時間を確保しています。

実は、人間がはっきりとした意識のもとに作業を行うことができるのは、起床後12~13時間が限界で、起床後15時間を超えると酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下する、ということが研究によりわかってきました。


睡眠時間と集中力

朝6時30分に起きて仕事に出る人なら、定時を過ぎる午後6時30分くらいには意識が緩慢になり始めます。夜9時30分くらいには酒気帯び運転と同じ程度の意識状態になります。

夜遅くまで残業をしても、集中力は上がらないのです。自分は夜のほうが集中できる、という方は、昼間に比べ夜間は電話や問い合わせなどの他人からの干渉が少なくなる等、他に原因があるのかもしれません。

人間は生き物ですから、適度な休息が必要なのです。

(4)少し変だと思ったらやるべき3つのこと

  1. 産業医や医師、カウンセラーなどの専門家に相談する

    少し心が重い程度であれば、かなり改善することがあります。
    また、規則正しい生活を勧められることもあります。
    適切な睡眠時間や、3食きちんと摂る、ぬるめのお風呂に入ることなど、基本的な生活習慣を調えることで復調できることがあります。

  2. 仕事の見直しをする

    長時間労働や過度な責任・負担があれば上司に相談してみましょう。
    何も働きかけないと、負担に感じている、ということをわかってもらえず、どんどん負荷がかかってしまいます。実際に心身の健康を壊してしまうことを考えれば、早めにSOSを出すことを躊躇しないで下さい。

  3. 家族や親しい人に自分の状況を話しておく

    だれかに自分の状態を話しておくことも大切です。弱い人間だ、と思われるかもしれないと心配になりますが、状況が悪化すると、自分で自分の不調を判断できなくなる恐れもあります。誰かに話すことで、他人からストップをかけてもらえるよう仕掛けておくのです。状況が改善した後、明るい報告をしたら、きっと相手も喜ぶでしょう。

(5)休職するとき

医師の診察を受け、休職が必要と言われたら、速やかに会社に報告しましょう。 仕事のことが心配かもしれませんが、まずは心身の休息を優先して下さい。

  1. 休職手続は会社によって決まりがありますから、会社のきまりに従って届出等をします。
  2. 休職中の賃金は支払われないことが多いですが、健康保険から傷病手当金が支給されます。傷病により休んだ4日目から支給対象。休んで給与が支払われない日について、標準報酬日額(注1)の3分の2が支給されます。支給開始から1年6か月受給が可能です。
  3. 傷病手当金を請求するとき、会社が本人の代わりに書類の届をすることが多いので、近況などを伝える機会になります。

(注1)標準報酬日額:社会保険料算出の元となる1日当りの金額のことで、標準報酬月額の30分の1相当額。
毎年4月~6月に支払われた給与の平均を基準に等級が決まる。

(6)復職するとき

復職のタイミングは、主治医、産業医、会社、本人で協議することが求められます。日常生活と仕事ができる生活とでは、気分的に大きく異なるからです。

病院などの「復帰支援プログラム」を利用できるときは、ぜひ利用してみて下さい。

  1. 復帰後の部署や業務は基本的に変わらないことが多いですが、業種や体の負担等を考慮して変更になることもあります。
  2. 可能なら、通院で早退する・休む、服薬で集中できないことがある、気分が悪くなることがあるなどの状況を、チームで共有してもらえるようにします。
  3. 気になることがあれば、1人で抱え込まず、上司や人事などの関連部署に相談しましょう。

長い職業生活、いろいろなことがあります。
療養生活も一つの経験として、前向きに考え、後の職業生活に活かして下さい。

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