「度数率」と「強度率」は何を表している?
労働災害の統計を見ていると、
強度率 0.○○
といった数字が出てきます。
数字だけを見ると、
くらいで終わってしまうこともあります。
しかし、度数率と強度率は同じものを測っているわけではありません。
簡単に分けると、
どのくらい頻繁に起きている?
起きた災害はどのくらい重い?
を見る指標です。
今回は、この二つの数字が何を表しているのかを見てみます。
まず「件数」だけでは比べにくい
例えば、二つの事業場で1年間に同じ5人の死傷者が発生したとします。
| 事業場 | 死傷者数 | 働いた時間 |
|---|---|---|
| A事業場 | 5人 | 多い |
| B事業場 | 5人 | 少ない |
死傷者数だけなら同じ「5人」です。
しかし、働いた人数や時間が大きく違えば、災害の発生頻度をそのまま比較することはできません。
そこで、働いた時間をそろえて比較する考え方が使われます。
度数率は「災害が起きる頻度」
厚生労働省では、度数率を、
労働災害による死傷者数
としています。
計算式は、
労働災害による死傷者数 ÷ 延べ実労働時間数
× 1,000,000
です。
なぜ「100万時間」にする?
事業場によって、労働者数も労働時間も違います。
そこで、すべてを100万時間働いた場合という同じ物差しに換算します。
例えば、度数率が、
なら、
100万延べ実労働時間当たり2人の死傷者が発生した水準
という意味になります。
実際にその事業場が100万時間働いたという意味ではありません。
事業場や業種の規模が違っても、労働時間当たりに換算することで災害の発生頻度を比較しやすくします。
実際に計算してみる
※以下は計算方法を説明するために当協会で設定した例です。
ある事業場で、1年間の延べ実労働時間が20万時間、労働災害による死傷者が1人だったとします。
= 5.0
この場合、度数率は5.0です。
死傷者は実際には1人ですが、100万時間当たりに換算すると5人という水準になります。
小さな事業場では数字が大きく動くこともある
先ほどの事業場で、死傷者が1人から2人になれば、
= 10.0
となります。
1人増えただけで、度数率は5.0から10.0へ変わります。
そのため、労働時間が比較的少ない事業場では、1件の災害によって度数率が大きく変動することがあります。
自社の数字を見る場合は、単年度だけではなく数年間の推移を見る方法もあります。
同じ業種の統計と比較する場合も、調査対象や計算方法が同じか確認します。
では「強度率」は何を見る?
度数率だけでは、災害がどれくらい重かったのかは分かりません。
例えば、同じ1件でも、
- 数日の休業で復帰した災害
- 長期間休業した災害
- 身体障害が残った災害
- 死亡災害
では、災害の重さが違います。
そこで使われるのが、強度率です。
強度率は「災害の重さの程度」
厚生労働省では、強度率を、
延べ労働損失日数
としています。
計算式は、
延べ労働損失日数 ÷ 延べ実労働時間数
× 1,000
です。
「労働損失日数」は単なる休業日数ではない
ここが、強度率を見るときに特に注意したいところです。
労働損失日数は、実際に会社を休んだ日数をそのまま合計したものではありません。
厚生労働省の労働災害動向調査では、災害の程度に応じて次のように換算します。
| 災害の程度 | 労働損失日数 |
|---|---|
| 死亡 | 7,500日 |
| 永久全労働不能 | 身体障害等級1~3級として7,500日 |
| 永久一部労働不能 | 身体障害等級4~14級に応じて50~5,500日 |
| 一時労働不能 | 暦日の休業日数 ×300/365 (うるう年は300/366) |
死亡の場合は、労働損失日数を7,500日として計算します。
そのため、死亡災害など重大な災害が発生すると、強度率が大きく上昇することがあります。
度数率が同じでも、強度率は違う
※以下は二つの指標の違いを説明するために当協会で設定した例です。
A事業場とB事業場で、働いた時間も発生した災害件数も同じだったとします。
| 事業場 | 発生頻度 | 災害の程度 |
|---|---|---|
| A | 同じ | 比較的軽い災害 |
| B | 同じ | 重大な災害 |
この場合、度数率は同じでも、B事業場の強度率は高くなる可能性があります。
逆に、強度率だけでも分からない
例えば、
| 状態 | 度数率 | 強度率 |
|---|---|---|
| 比較的軽い災害が多い | 高くなりやすい | 低い場合がある |
| 件数は少ないが重大災害が発生 | 低い場合がある | 高くなりやすい |
つまり、
ことで、災害の状況が少し見えやすくなります。
度数率が下がった=すべて良くなった?
例えば、前年より度数率が下がったとします。
それは、災害の発生頻度が下がったことを示します。
しかし、同じ年に重大な災害が発生し、強度率が上昇しているかもしれません。
反対に、強度率は低くても、比較的軽い災害が何度も発生している可能性もあります。
そのため、
ことに意味があります。
「ゼロ」も読み方に注意する
ある年の度数率が0だったとします。
それは、その統計の対象となる災害がその期間には発生しなかったということです。
しかし、
- 危険な状態が存在しなかった
- ヒヤリ・ハットがなかった
- 将来も災害が起こらない
ということまで表しているわけではありません。
度数率や強度率は、実際に発生した労働災害をもとにした指標です。
職場に残っている危険そのものを直接測定している数字ではありません。
業種を比較するときは同じ条件で見る
度数率や強度率は、業種別にも公表されています。
ただし、数字を比較するときは、
- 同じ年の統計か
- 同じ調査か
- 同じ災害の範囲か
- 同じ事業所規模か
なども確認します。
数字だけを取り出して、別の調査とそのまま比較すると、意味が変わってしまうことがあります。
実は「度数率」にも別の統計がある
現在の「職場のあんぜんサイト」では、労働災害動向調査による度数率のほかに、
労働者死傷病報告による休業4日以上の死傷者数などを使って算出した「度数率(休業4日以上)」も公開されています。
この二つは、調査方法や対象となる災害の範囲が同じではありません。
厚生労働省も、
算出された度数率の値も異なる
と注意しています。
統計表から数字を拾うときは、何をもとに算出された度数率なのかも一緒に確認します。
労働災害動向調査では「休業1日以上」も対象になる
労働災害動向調査の度数率では、休業1日以上の労働災害や、身体の一部またはその機能を失う災害による死傷者を対象として算出します。
一方、一般に労働災害の発生状況としてよく目にする「休業4日以上の死傷者数」とは、対象範囲が異なります。
そのため、
を比べるときも、対象範囲を確認しておきます。
数字が高かったら、そこで終わらない
自社の度数率が高かった。強度率が高かった。
そこで、
だけで終わると、何を変えるのかが分かりません。
例えば、
- どんな災害が多かったのか
- どの作業で発生したのか
- どの部署で発生したのか
- 同じ原因が繰り返されていないか
- 重大な災害はどのように起きたのか
まで戻って確認します。
職場で確認してみる
| 確認してみること | 確認 |
|---|---|
| 度数率が何を表す数字か分かっている | □ |
| 強度率が何を表す数字か分かっている | □ |
| 労働損失日数が実際の休業日数そのものではないことを確認している | □ |
| 度数率と強度率の両方を見ている | □ |
| 自社の数年間の推移を確認している | □ |
| 他社・他業種と比較するときは同じ統計を使っている | □ |
| 度数率の対象となる災害の範囲を確認している | □ |
| 率だけでなく実際の災害内容も確認している | □ |
| 数字の変化を具体的な改善につなげている | □ |
二つの数字を並べると見えてくる
度数率と強度率は、どちらも労働災害を見る数字ですが、役割は違います。
災害の「頻度」
災害の「重さ」
一つはどれくらい起きたか。
もう一つは起きた災害がどれくらい重かったか。
数字の大小だけを見るのではなく、二つの数字が何を測っているのかを知ってから見ると、労働災害統計の見え方も変わります。
厚生労働省の解説を見る
「職場のあんぜんサイト」では、度数率、強度率、年千人率について、計算方法と意味が解説されています。
最新の労働災害統計を見る
「職場のあんぜんサイト」では、死亡災害、死傷災害、度数率・強度率などの最新の労働災害統計を確認できます。
労働災害動向調査を確認する
厚生労働省の「労働災害動向調査」では、産業別・事業所規模別などの度数率や強度率が公表されています。
当協会の用語解説を見る
当協会の安全衛生関連用語集でも、度数率と強度率の意味や計算式を紹介しています。
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