安全衛生教育は派遣元と派遣先、どちらが行う?
派遣労働者を受け入れるとき、安全衛生教育について、
教育も全部派遣元?
と思うことがあります。
反対に、実際に仕事をするのは派遣先なので、
と考えることもあります。
実際には、教育の種類によって派遣元と派遣先の役割が分かれています。
今回は、派遣労働者への安全衛生教育を、「誰が行うのか」という視点から整理してみます。
まず結論を整理する
代表的な安全衛生教育について、大まかな役割を整理すると次のようになります。
| 教育 | 主な実施者 |
|---|---|
| 雇入れ時の安全衛生教育 | 派遣元 |
| 派遣元が派遣先事業場を変更するなど、作業内容を変更した場合の教育 | 派遣元 |
| 派遣先で実際の作業内容を変更した場合の教育 | 派遣先 |
| 危険・有害な業務に必要な特別教育 | 派遣先 |
派遣労働者については、労働安全衛生法の責任がすべて派遣元、またはすべて派遣先にあるわけではありません。
どの措置についてどちらに責任があるのかを分けて確認する必要があります。
雇入れ時教育は派遣元
労働安全衛生法では、労働者を雇い入れたとき、その業務に関する安全衛生教育を行うことが事業者に義務付けられています。
派遣労働者の場合、雇用契約を結んでいるのは派遣元です。
そのため、雇入れ時の安全衛生教育は派遣元事業者の責任で行います。
でも、派遣元だけでは分からないことがある
雇入れ時教育を行う責任が派遣元にあるとしても、実際に働く場所は派遣先です。
派遣元だけでは、
- どんな機械を使用するのか
- どんな材料を扱うのか
- どのような作業方法なのか
- どんな危険や有害性があるのか
- どんな保護具を使用するのか
といった具体的な情報を十分に把握できない場合があります。
そこで厚生労働省は、派遣元が必要な教育を行えるよう、派遣先から作業内容や危険性などの情報を事前に入手することを求めています。
実際の作業・設備・危険性を把握
派遣先に教育をお願いすることもできる
実際の設備や作業を使った方が、教育しやすい場合もあります。
そのため、派遣元が派遣先へ雇入れ時などの安全衛生教育の実施を委託することもできます。
ただし、派遣先にお願いしたからといって、派遣元が
で終わるわけではありません。
派遣元は、派遣先で必要な教育が実施されたことを書面などで確認します。
派遣先に教育の実施を委託した場合でも、雇入れ時教育について派遣元が確認すべき責任までなくなるわけではありません。
派遣先が変わったら?
派遣労働者が別の派遣先へ派遣されると、実際に行う仕事や使用する設備などが変わることがあります。
厚生労働省の資料では、派遣先事業場を変更したときには、派遣元が作業内容変更時の安全衛生教育を行うという整理が示されています。
新しい派遣先で行う業務に合わせて、必要な教育内容を確認します。
派遣先で仕事を変えたら、派遣先にも責任がある
一方、派遣労働者を受け入れた後、派遣先が
- 別の作業へ変更する
- 使用する設備を大きく変更する
- 作業方法を大幅に変更する
といった場合があります。
このように派遣先で実際の作業内容を変更した場合は、派遣先にも作業内容変更時の安全衛生教育を行う義務があります。
派遣元も、派遣先で作業内容が変更されたことを把握した場合は、派遣先で教育が実施されたことを確認します。
特別教育は派遣先
さらに役割が明確なのが、特別教育です。
労働安全衛生法では、法令で定められた危険・有害な業務に労働者を就かせる場合、特別教育を行う必要があります。
派遣労働者の場合、実際にその危険・有害業務へ従事させるのは派遣先です。
そのため、特別教育の実施義務は派遣先にあります。
すでに特別教育を受けていたら?
派遣労働者が、その業務についてすでに必要な特別教育を受けている場合もあります。
派遣先は、その労働者が当該業務についてすでに特別教育を受けているか、必要な知識・技能を有しているかを確認します。
特別教育の科目の全部または一部について、十分な知識・技能を有していると認められる場合は、その科目を省略することができます。
それ以外については、派遣先が必要な特別教育を行います。
派遣元側も、派遣労働者が危険・有害業務へ従事する場合には、派遣先で必要な特別教育が実施されたことを確認します。
どの業務について、どの教育を受けているのかを確認します。
必要な資格や特別教育がないまま対象業務に従事させないよう、派遣元と派遣先で情報を共有します。
例えば、こんなケースなら
※以下は、派遣元と派遣先の役割を説明するために当協会で設定した例です。実際の事案を紹介したものではありません。
派遣会社Aが雇用した労働者を、製造会社Bへ派遣するとします。
労働者は、工場内で製品の加工作業を行います。
| 場面 | 確認する役割 |
|---|---|
| 派遣会社Aが労働者を雇い入れた | 派遣元Aが雇入れ時教育を行う |
| 工場Bで行う具体的な作業について教育したい | Bが作業・設備・危険性などの情報をAへ提供し、必要に応じて教育にも協力する |
| Bが派遣労働者を別の作業へ変更した | Bが変更後の作業について必要な教育を行う |
| 変更後の作業に特別教育が必要だった | Bが教育歴を確認し、必要な特別教育を行う |
| 教育が行われたか確認する | AもBでの教育実施結果を確認する |
なぜこんなに役割が分かれている?
派遣労働では、
という特徴があります。
そのため、雇用主として行う措置と、実際の作業場所で危険を防止するための措置について、派遣元と派遣先にそれぞれ役割があります。
派遣先だから「派遣元に任せる」では足りない
派遣先には、自社の設備や作業についての情報があります。
例えば、
- この機械のどこが危険なのか
- どの保護具を使用するのか
- 立入禁止区域はどこか
- 異常時にはどう停止するのか
- どのような作業手順なのか
といった情報です。
これらを派遣元へ伝えなければ、派遣元も実際の仕事に合った教育を行えません。
実際の職場で危険にさらされる点は、派遣労働者も派遣先の労働者も同じです。
派遣元と派遣先が役割を分担しながら、必要な安全衛生情報が労働者まで届くようにします。
派遣元も「派遣先がやるだろう」で終わらせない
反対に、派遣元も
だけでは十分ではありません。
派遣元は、
- 派遣先でどんな仕事をするのか把握する
- 必要な情報を派遣先から入手する
- 雇入れ時等の教育を適切に行う
- 派遣先へ教育を委託した場合は結果を確認する
- 特別教育の実施状況を確認する
- 必要な資格を持っているか確認する
など、派遣先との連絡・調整を行います。
教育したかどうかを、お互いに確認する
派遣元と派遣先の間で、
となることは避けたいところです。
厚生労働省の通達では、派遣元・派遣先が教育の実施結果を書面等で確認することが示されています。
受入れ前に確認してみる
| 確認してみること | 確認 |
|---|---|
| 派遣労働者が行う具体的な作業を派遣元・派遣先で共有している | □ |
| その作業の危険性・有害性を共有している | □ |
| 派遣元で必要な雇入れ時等教育を行っている | □ |
| 教育内容が実際の派遣業務に合っている | □ |
| 派遣先は派遣元での教育実施状況を確認している | □ |
| 特別教育が必要な業務か確認している | □ |
| 必要な資格や特別教育の受講歴を確認している | □ |
| 派遣先で作業を変更するときの教育方法を決めている | □ |
| 教育の実施結果を派遣元・派遣先で確認できる | □ |
答えは「両方。ただし役割が違う」
安全衛生教育は派遣元と派遣先のどちらが行うのか。
一言で答えるなら、
ただし、教育によって責任が違う。
ということになります。
雇入れ時教育は派遣元。
派遣先で作業内容を変更した場合の教育や、危険・有害業務に必要な特別教育は派遣先。
そして、その間をつなぐのが派遣元と派遣先の情報共有と実施確認です。
「どちらがやるのか」で線を引いて終わるのではなく、必要な教育が実際に派遣労働者へ届いているか。
そこまで確認することが、派遣労働者の安全衛生対策につながります。
厚生労働省の派遣労働者向け資料を見る
厚生労働省では、派遣元・派遣先の安全衛生上の責任分担、安全衛生教育、業種別マニュアルなどをまとめて公開しています。
安全衛生教育の役割分担を確認する
厚生労働省では、雇入れ時教育、作業内容変更時教育、特別教育について、派遣元・派遣先の役割を分かりやすく整理した資料を公開しています。
▶ 厚生労働省「派遣労働者に対する安全衛生教育について」を見る
労働安全衛生法の安全衛生教育を確認する
雇入れ時教育、作業内容変更時教育、特別教育の基本的な制度については、厚生労働省の安全衛生教育の案内でも確認できます。
▶ 厚生労働省「労働安全衛生関係の免許・資格・技能講習・特別教育など」を見る
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