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労働災害事例を「見る」から「使う」へ

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、数多くの労働災害事例が掲載されています。

発生状況を読み、原因と対策を確認するだけでも参考になります。

しかし、せっかくの事例を「こんな事故があった」で終わらせるのは、少しもったいないかもしれません。

原因を見る前に自分たちで考えてみる。
4Mの視点で見直してみる。
そして、自分の職場にも似た条件がないか探してみる。

ここでは、当協会の安全管理者選任時研修テキストで紹介している4Mによる災害分析を使って、公開されている労働災害事例を職場の教育や再発防止に活用する方法を考えてみます。

「職場のあんぜんサイト」には多くの事例がある

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、死亡災害や重大災害などについて、発生状況、原因、対策をイラスト付きで確認できます。

業種、事故の型、起因物、キーワードなどから検索できるため、自分の職場に関係する事例を探すこともできます。

▶ 職場のあんぜんサイト「労働災害事例」を検索する

事例を探すところから教育に使える

自社と同じ業種だけでなく、「転倒」「はさまれ・巻き込まれ」「墜落・転落」など、事故の型から探してみると、別の業種でも参考になる事例が見つかります。

最初から「原因」と「対策」を読まない

労働災害事例には、原因と対策まで掲載されています。

読むだけなら、最初から最後まで順番に見ればよいのですが、教育に使うなら少し使い方を変えてみます。

① 発生状況だけ読む
↓
② 原因を自分たちで考える
↓
③ 対策を考える
↓
④ 公開されている原因・対策と比べる

正解を当てることが目的ではありません。

自分たちはどこに注目したか。
何を見落としたか。

それを確認することで、一つの事例から得られるものが増えます。

原因を「作業者の注意不足」だけで終わらせない

例えば、濡れた床で作業者が滑って転倒したとします。

最初に思いつく原因は、

「足元をよく見ていなかった」

かもしれません。

すると対策も、

「足元に注意する」

になりがちです。

しかし、本当にそれだけでしょうか。

4Mで、見る方向を増やしてみる

当協会の「安全管理者選任時研修」テキストでは、災害の原因を整理する方法として4Mによる災害分析を紹介しています。

4M 要因 見るところの例
Man 人的要因 忘却、思い込み、疲労、危険感覚のずれ、コミュニケーションなど
Machine 機械要因 機械設備の設計、危険防護、点検・整備など
Media 環境要因
(ManとMachineをつなぐ媒体)
作業情報、作業動作、作業方法、作業空間、作業環境など
Management 管理要因 規程・マニュアル、教育訓練、監督・指導、人員配置、健康管理など

先ほどの「濡れた床で転倒した」という例を4Mで見てみます。

視点 確認してみること
Man 急いでいなかったか、足元を確認できていたか
Machine 床材は滑りやすくなかったか、排水設備に問題はなかったか
Media なぜ床が濡れたのか、通路や作業方法、作業環境に問題はなかったか
Management 清掃方法や担当者は決まっていたか、濡れたときの対応方法は決められていたか

※この転倒例と4Mへの整理は、4Mの使い方を説明するために当協会で作成した例です。

こうして見ると、「本人が注意する」以外にも確認できるところが見えてきます。

4Mは「4つの原因を無理に作る」ためのものではありません。

一方向だけから原因を決めつけず、別のところにも関係する要因がなかったかを見るための考え方として使います。

4Mで見たあとに、公開されている原因と比べる

自分たちで原因を考えたら、「職場のあんぜんサイト」に掲載されている原因を確認します。

ここで、

自分たちが気づいたこと
+
公開事例に書かれていたこと
↓
見落としていた視点を確認する

という使い方ができます。

自分たちが考えた原因が公開事例と違っていても、それだけで間違いというわけではありません。

公開されている情報の範囲と、自分たちが想定した条件が違う場合もあります。

大切なのは、掲載事例から確認できる事実と、自分たちの推測を混同しないことです。

次に「自分の職場なら?」へ進む

ここまででも災害事例の勉強になります。

しかし、もう一段進めてみます。

事例とまったく同じ機械や作業が自社になかったとしても、災害につながった条件に注目します。

事例で見つけたこと 自分の職場なら?
床が濡れていた 水、油、粉などで滑りやすくなる場所はないか
作業者が急いでいた 時間に追われやすい作業はないか
異常な状態が放置されていた 異常を見つけた人が対応できる仕組みになっているか
管理方法が明確でなかった 誰が確認し、誰が改善するか決まっているか

※上の表は、公開事例そのものを示すものではなく、事例を自分の職場へ置き換えて考える方法の例です。

同じ事故を探すのではなく、似た条件を探す

業種や設備が違っていても、「見えにくい」「急いでいる」「異常が放置される」など、似た条件が自分の職場にないかを見ることができます。

原因調査は「犯人捜し」ではない

当協会の安全管理者選任時研修テキストでは、災害調査について、再発防止や類似災害の発生を未然に防ぐことが目的であり、犯人捜しにならないよう注意することを説明しています。

例えば、

誰が失敗した?
↓
何が起き、なぜ起きた?

という方向で見ていきます。

人の行動に問題があったとしても、なぜその行動になったのか、設備や作業方法、管理に改善できるところはないかまで考えることで、次の災害を防ぐ対策につなげやすくなります。

事例から対策までの流れ

当協会のテキストでは、災害調査から再発防止までを、次のような流れで説明しています。

事実の確認
↓
問題点の抽出
↓
根本的問題点の決定
↓
再発防止対策の検討
↓
対策の実施
↓
対策の評価

つまり、対策を書いたところで終わりではありません。

実際に対策が実施され、新しい設備や手順が標準化され、作業に定着しているかを確認するところまでが重要です。

研修で使うなら、こんな方法もあります

一つの事例を選び、数人で考えてみます。

段階 やってみること
1 発生状況だけを読む
2 気づいた問題点を出す
3 4Mから、ほかの要因がないか考える
4 再発防止対策を考える
5 サイトに掲載された原因・対策を見る
6 自分の職場に似た条件がないか探す

一つの事例でも、読むだけの場合より多くのことを考えることになります。

ヒヤリ・ハット事例でも試せる

「職場のあんぜんサイト」には、実際にけがが発生した労働災害だけでなく、ヒヤリ・ハット事例も掲載されています。

墜落・転落、転倒、飛来・落下、はさまれ・巻き込まれ、感電・火災など、事故の型ごとに事例を見ることができます。

重大な災害だけでなく、身近なヒヤリ・ハットを使って同じように考えてみることもできます。

▶ 職場のあんぜんサイト「ヒヤリ・ハット事例」を見る

一つの事例で確認してみる

確認してみること 確認
発生状況から事実を整理した □
掲載されている原因を見る前に自分たちで考えた □
Man、Machine、Media、Managementから見直した □
「本人の注意」だけで終わらない対策を考えた □
公開されている原因・対策と比較した □
自分の職場に似た条件がないか探した □
対策を実施したあと、効果を確認するところまで考えた □

労働災害事例は、過去の事故を読むためだけの資料ではありません。

発生状況から自分たちで原因を考え、4Mで視点を広げ、公開されている原因・対策と比べる。

さらに、自分の職場にも似た条件がないかを見る。

そうすることで、一つの労働災害事例を「自分の職場でまだ起きていない災害を防ぐための教材」として使うことができます。

講習テキストでも確認できます

当協会の「安全管理者選任時研修」テキストでは、4Mによる災害分析、原因調査の方法、再発防止対策について解説しています。

▶ 4Mによる災害分析を見る

▶ 原因調査の方法・再発防止対策を見る

▶ 事例で見る再発防止策を見る

公的な労働災害事例を探す

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、労働災害事例のほか、死亡災害データベース、労働災害(死傷)データベース、ヒヤリ・ハット事例、機械災害データベースなども公開されています。

▶ 職場のあんぜんサイト「労働災害事例」を見る


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