ストレスチェックは「実施して終わり」ではない
毎年ストレスチェックを実施して、労働者に結果を通知する。
そこまで終わると、
となっていないでしょうか。
ストレスチェックには、本人に自分のストレス状態へ気づいてもらう役割があります。
しかし、それだけではありません。
結果をきっかけに必要な人を医師の面接指導へつなげたり、集団ごとの結果から職場のストレス要因を見つけたりすることもできます。
今回は、ストレスチェックを実施したあと、何につなげるのかを見ていきます。
ストレスチェックには二つの見方がある
ストレスチェックの結果には、大きく分けて二つの使い方があります。
本人への気づき・必要な面接指導
職場のストレス要因を考える
個人のストレスが高ければ、その人への支援を考えます。
一方、ある部署や職場全体に共通する傾向が見られれば、仕事の進め方や職場環境に改善できるところがないか考えます。
本人が自分の状態に気づくことに加えて、集団として結果を分析し、職場環境の改善へつなげることも制度の重要な目的の一つです。
まず、結果は本人へ通知される
ストレスチェックの個人結果は、実施者から直接本人へ通知されます。
事業者が、本人の同意なく個人のストレスチェック結果を取得することはできません。
これは、
という不安によって、労働者が本当の状態を回答できなくなることを防ぐためにも重要です。
高ストレス者なら、すぐ会社へ通知される?
高ストレス者と判定されたからといって、その結果が自動的に会社へ通知されるわけではありません。
ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、実施者が医師による面接指導を受ける必要があると認めた労働者には、その旨が本人へ通知されます。
そして本人が面接指導を申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。
面接したら、その後も見る
医師による面接指導を実施した場合、事業者は医師から就業上の措置について意見を聴きます。
その意見を踏まえて、必要がある場合には、適切な措置を講じます。
例えば、
- 労働時間を短くする
- 時間外労働を減らす
- 仕事内容や業務量を見直す
- 配置や勤務方法を検討する
などが考えられます。
※実際の就業上の措置は、医師の意見や本人の状況、職場の実情などを踏まえて事業者が適切に判断します。
必要な人を面接指導や適切な支援へつなぎ、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことが重要です。
もう一つの出口が「集団分析」
ストレスチェックは、個人への対応だけでなく、結果を一定規模の集団ごとに集計・分析する集団分析にも活用できます。
例えば「仕事のストレス判定図」では、部署や職場ごとに、
- 仕事の量的負担
- 仕事のコントロール
- 上司や同僚からの支援
などの傾向を見ることができます。
すると、
という見方ができます。
集団分析は「犯人探し」に使わない
例えば、ある部署でストレスが高い傾向が見られたとします。
そこで、
と個人を探すのが集団分析ではありません。
見るのは、
- 仕事量が多くなっていないか
- 急な仕事が集中していないか
- 役割が分かりにくくないか
- 相談しにくい状態になっていないか
- 上司や同僚からの支援が不足していないか
など、職場として変えられる要因です。
ストレスチェックの集団分析は、個人を特定するためではなく、職場に共通するストレス要因を把握し、職場環境の改善につなげるために活用します。
集団分析は義務?
ここは、ストレスチェック本体と区別しておく必要があります。
| 取組 | 位置付け |
|---|---|
| ストレスチェックの実施 |
義務 ※現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場 |
| 対象者から申出があった場合の医師による面接指導 | 義務 |
| 集団分析 | 努力義務 |
| 集団分析を踏まえた職場環境改善 | 努力義務 |
集団分析や職場環境改善は現在、事業場の規模にかかわらず努力義務です。
しかし、ストレスチェック制度の目的を考えると、実施できる範囲で職場環境改善へつなげることが望まれます。
集団分析ではプライバシーを守る
集団分析を行う際には、個人が特定されないようにすることが重要です。
2026年6月には労働安全衛生規則が改正され、2027年4月1日から、集団分析について「特定の個人を識別することができない方法」で実施することが省令上も明記されます。
これは新しい考え方を導入するというより、従来から求められてきたプライバシー保護の考え方を明文化したものです。
小さな部署などでは、分析結果から個人が推測されるおそれがあります。
集団の設定や結果の取扱いでは、個人を特定できないように十分配慮する必要があります。
数字を見て終わらない
集団分析を実施して、
と確認しただけでは、職場は変わりません。
分析結果を手がかりに、実際の職場を見ます。
例えば、仕事量の負担が高い傾向が見られたなら、
- 特定の人や時期へ仕事が集中していないか
- 締切の設定に無理がないか
- 突発業務が多くなっていないか
- 業務の分担を見直せないか
などを確認できます。
上司からの支援が低い傾向なら、
- 相談する機会があるか
- 指示が一方通行になっていないか
- 業務上の困りごとを共有できているか
などを考えることができます。
※上記は当協会で整理した職場環境改善の考え方の例です。分析結果だけで原因を断定せず、実際の職場の状況を確認して対策を検討します。
「ストレスが高い部署=悪い部署」ではない
集団分析の数値には、さまざまな要因が影響します。
繁忙期だった、大きな案件が重なっていた、人員構成が変わったなど、一時的な事情が影響することもあります。
そのため、
と単純に決めるのではなく、結果を職場を見るための手がかりとして使います。
改善は大がかりなものでなくてもいい
職場環境改善というと、制度を全面的に変えたり、大きな予算を使ったりするものを想像するかもしれません。
しかし、分析結果と実際の職場を見ながら、身近なところから変えられることもあります。
| 見えてきたこと | 検討してみる例 |
|---|---|
| 仕事量が偏っている | 業務分担や応援体制を見直す |
| 急な仕事が多い | 依頼方法や優先順位の決め方を見直す |
| 相談しにくい | 定期的に話せる機会を設ける |
| 役割が分かりにくい | 担当範囲や判断権限を整理する |
| 情報共有が不足している | 会議や引継ぎ方法を見直す |
改善したら、次回と比べてみる
職場環境を改善したら、翌年のストレスチェックでも同じ傾向を確認できます。
例えば、
というように、一回だけの数字ではなく、継続して変化を見ることもできます。
ストレスチェックの結果は、職場の状態を考えるための情報の一つです。
毎年測るだけでなく、結果から気づいたことを職場環境の改善へつなげることで、制度をより活用できます。
50人未満の事業場も準備が必要
2026年10月現在、ストレスチェックの実施義務は常時50人以上の労働者を使用する事業場が対象です。
2025年の労働安全衛生法改正により、これまで努力義務だった50人未満の事業場についても、2028年4月1日から実施が義務化されます。
なお、集団分析と職場環境改善については、事業場規模にかかわらず引き続き努力義務です。
また、ストレスチェック結果等の労働基準監督署への報告義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業場が対象です。
実施したあとを確認してみる
| 確認してみること | 確認 |
|---|---|
| 個人結果が本人へ適切に通知されている | □ |
| 高ストレス者へ面接指導の案内が行われている | □ |
| 申出があった場合に医師の面接指導へつなげている | □ |
| 面接指導後、必要な就業上の措置を検討している | □ |
| 集団分析を実施できないか検討している | □ |
| 集団分析で個人が特定されないよう配慮している | □ |
| 分析結果から実際の職場の状況を確認している | □ |
| 改善した内容を次回の結果でも確認している | □ |
ストレスチェックを毎年予定どおり実施することは大切です。
しかし、実施そのものがゴールではありません。
個人については、必要な人を面接指導や支援へつなげる。
職場については、集団として見えてきた傾向を職場環境の改善へつなげる。
「今年も実施した」で終わらず、その結果を次にどう使うか。
そこまで考えることで、ストレスチェックをメンタルヘルス不調の未然防止に活用することができます。
当協会のストレスチェック資料を見る
当協会では、ストレスチェック制度の目的、導入準備、実施、面接指導、集団分析まで、制度の流れをまとめています。
メンタルヘルス研修でも確認できます
当協会のメンタルヘルス研修では、ストレスチェック制度、セルフケア、管理監督者によるラインケア、職場環境改善などについて学びます。
厚生労働省のストレスチェック資料を見る
厚生労働省では、ストレスチェック制度の概要、実施マニュアル、調査票、実施プログラム、集団分析・職場環境改善に関する資料などをまとめて公開しています。
▶ 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」を見る
「こころの耳」でも、ストレスチェック制度や職場環境改善に役立つ資料・ツールが紹介されています。
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