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事故によって企業責任が問われるケース

実際に自動車の事故が起こった場合、事業者はどういった責任を負うことになるのでしょうか。前述の各種責任に基づいて整理してみましょう。

◆社有車の事故

  1. 業務中の事故……業務を遂行中の事故のため、企業や管理者の側が運行供用者となり、同時に使用者責任も負う。
  2. 無断で私用に使っていた場合の事故……従業員が社有車を使用するまでの経緯やそれが業務とどう関連するのか、日常の使用状況などを総合的にみて判断する。その結果、「外見上使用者の事業に見える」と判断されれば、事業者の責任を問われることも。
  3. 社有車が盗難され、第三者が事故を起こした場合……社有車の管理に過失があると判断されれば、責任を問われるケースもありうる。
  4. 物損事故……人身事故とは異なり、運行供用者責任は問われない。会社の使用者責任のみが問われることとなる。
自賠法適用条件フロー図

◆マイカーの事故

  1. 企業が業務でマイカーを使うことを認めていた……原則的には社有車を使用していたのと変わらない状態のため、会社の使用者責任および人身事故では運行供用者責任を問われる。ただし、企業側がマイカーの使用を一切禁じ、それを明文化、従業員に遵守を徹底していたと認められれば、責任は問われない。
  2. 会社がマイカー通勤のみを認め、それを遵守した従業員が通勤途中に事故を起こした場合……マイカーでの通勤時の事故は、一般的には企業に責任は負わないものとされているが、判断は分かれる。積極的にマイカー通勤を推奨していたり、マイカー通勤者にガソリン代相当額を払ったり、駐車場を準備していたり、また保険料を負担していたりする場合は、マイカー通勤を認めているという判断となり、責任が発生する可能性が高くなる。事案ごとにケースバイケースで判断されることが多い。
人身事故における企業責任
所有者・責任別 業務 通勤
社有車 使用者責任
運行供用者責任
従業員のマイカー 使用者責任
運行供用者責任

〇ほぼ認められる △認められる場合もある

このように、従業員の交通事故において、企業側が責任を免れることはとても難しいということがわかります。また裁判所の判断も判例によって分かれており、マイカー通勤のあり方を明文化すること、交通費や関連する負担についてもきちんとしたルール作りが必要になってきます。

◆実際の判例

会社員のマイカー通勤途上で起こした事故について、会社側が社員によるマイカー通勤を認め、さらに通勤手当を支給していたことから会社のマイカー通勤への容認と評価し、会社に使用者責任を認めた (福岡地裁 平成10年8月5日判決)

会社員がマイカー通勤途上で起こした事故について、会社が駐車場を第三者から借りて使用させていたが、駐車料金は利用者に分担して負担させていた。マイカーを日頃から社用に利用したこともなく、燃料費や維持費を支給したこともないことから、そのマイカーに対して運行支配や運行利益があったとはいえないとして、会社に運行供用者責任を認めなかった。 (鹿児島地裁 昭和53年10月26日)

ちょっと一息 ~ 江戸時代のルール

「自転車以外の軽車両通行止め」の標識

これは「自転車以外の軽車両通行止め」の標識ですが、このイラストのモデルが、時代劇などで見かける大八車(代八車とも)です。昭和の中頃までは各地で使われていました。
なんと、江戸時代中期には大八車による人身事故が多発し、重い刑罰も設けられていたそうです。

  • 1686年 宰領(荷物運搬の監督者)付き添いが規則化
  • 1707年 違反車両の通報義務などが追加
  • 1716年 違反者に対して流罪や死刑が科される
  • 1716年 違反者に対して流罪や死刑が科される
  • 1716年 違反者に対して流罪や死刑が科される

(『ものと人間の文化史160 牛車』櫻井良昭 2012 法政大学出版局 より)

この他にも、「やむを得ず走って牽く場合には、先導人を付けなければならない。」とか「曲がり角では巻き込み事故に注意する。」、「意味なく大八車を路駐させてはなならない。」というルールまであったようです。

また、典型的な事故として、荷を積んで客先に急ぐ大八車が曲がり角で通行人と接触したり、ブレーキが無いため過積載の大八車が坂道を暴走して人と激突するといったケースが沢山あったとのこと。
何やら現代と共通する要素もあるようです。

規則違反者は島流しや家財没収という重い刑罰の対象となったそうですが、それでも一向に事故が減らないため、有名な吉宗将軍の時代にはついに死罪も刑罰に追加されたとか。

近年(平成25年)「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」により過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪が設けられ、従来の刑法による業務上過失致死傷罪より罰則が強化されたことは、現代の交通社会を生きる私たちもその意味を考え、行動に活かす必要がありそうです。

 

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