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【第2章】2 労働安全衛生マネジメントシステム②

2-2 労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の概要 2)

2)実施内容

① 事業者が安全衛生方針を表明する

指針

(安全衛生方針の表明)

第五条 事業者は、安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させるものとする。

2 安全衛生方針は、事業場における安全衛生水準の向上を図るための安全衛生に関する基本的考え方を示すものであり、次の事項を含むものとする。

一 労働災害の防止を図ること。

二 労働者の協力の下に、安全衛生活動を実施すること。

三 法又はこれに基づく命令、事業場において定めた安全衛生に関する規程(以下「事業場安全衛生規程」という。)等を遵守すること。

四 労働安全衛生マネジメントシステムに従って行う措置を適切に実施すること。

安全衛生方針で一番大切なことは経営や安全管理部門又は事業場トップの「本音」「本心」であり、これを組織内外の関係者と共有するための「表明」です。ここがブレると全てが形骸化し、取り組みの多くが徒労に終わりがちです。

第一章のゲーリー社長の成功譚も、その心からの思いに管理監督者や第一線の労働者が共鳴し呼応したことにあります。

このことを前提としたうえで、技術的な事項として必要な項目が指針に示されています。


②建設物、設備、原材料、作業方法等の危険性又は有害性などを調査し、その結果を踏まえ、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を決定する

指針


(危険性又は有害性等の調査及び実施事項の決定)

第十条 事業者は、法第二十八条の二第二項に基づく指針及び法第五十七条の三第三項に基づく指針に従って危険性又は有害性等を調査する手順を定めるとともに、この手順に基づき、危険性又は有害性等を調査するものとする。

2 事業者は、法又はこれに基づく命令、事業場安全衛生規程等に基づき実施すべき事項及び前項の調査の結果に基づき労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を決定する手順を定めるとともに、この手順に基づき、実施する措置を決定するものとする。

リスクアセスメントの意味や手法がわかっても、危険源の特定、見積り、評価方法や必要な措置の決定について手順化されていないと、組織としてリスクの評価結果及び対応が適切に行えません。

従って、ここでは「いつ、どこで、誰が、何を、どういう方法で」実施するのかという、「手順の決定」も重要視しています。


③ 安全衛生方針に基づき、安全衛生目標を設定する

指針

(安全衛生目標の設定)

第11条 事業者は、安全衛生方針に基づき、次に掲げる事項を踏まえ、安全衛生目標を設定し、当該目標において一定期間に達成すべき到達点を明らかとするとともに、当該目標を労働者及び関係請負人その他の関係者に周知するものとする。

一 前条第一項の規定による調査結果

二 過去の安全衛生目標の達成状況

ここでは、当期の目標を設定することと、その際参考とすべき情報について規定されており、特に「一前条第一項の規定による調査結果」つまりリスクアセスメントの結果を踏まえること、とされていることに注意が必要です。

「方針」:物事を実行する上での方向・理念

「目的」:最終的に成し遂げようと目指す到達点・ゴール

「目標」:目的を達成するまでの手段・指標

「目標」ですから、期間内で達成しようとする具体的数値を決めます。当然、放置していて達成できるような数値や常識的に達成不能な数値は「目標」とは言えません。「適度な努力を要する数値」を基に目標設定することが求められます。

また、安全衛生目標を具体的な数値にしておくことは達成状況の客観的評価につながり、翌期以降の参考にもなります。


④②の実施事項と③の安全衛生目標等に基づき、安全衛生計画を作成する

指針

(安全衛生計画の作成)

第12条 事業者は、安全衛生目標を達成するため、事業場における危険性又は有害性等の調査の結果等に基づき、一定の期間を限り、安全衛生計画を作成するものとする。

2 安全衛生計画は、安全衛生目標を達成するための具体的な実施事項、日程等について定めるものであり、次の事項を含むものとする。

一 第十条第二項の規定により決定された措置の内容及び実施時期に関する事項

二 日常的な安全衛生活動の実施に関する事項

三 健康の保持増進のための活動の実施に関する事項

四 安全衛生教育及び健康教育の内容及び実施時期に関する事項

五 関係請負人に対する措置の内容及び実施時期に関する事項

六 安全衛生計画の期間に関する事項

七 安全衛生計画の見直しに関する事項

具体的な実施事項の内、①安全衛生活動、②安全衛生教育、③健康保持のための活動、④健康教育の具体的内容については、JISQ45100附属書Aの記載事項などを参考に、事業者独自の活動も含めて事業者自身が必要に応じ選択します。


「日常的な安全衛生活動」について、その具体例として「危険予知(KY)活動、4S活動、ヒヤリ・ハット事例の収集等及びこれに係る活動の実施、安全衛生改善提案活動、健康づくり活動」が例示されています。「安全衛生大会、安全週間や労働衛生週間の啓発行事、危険の見える化活動、安全衛生診断の受診等」のように時期を定めて行う安全衛生活動も含まれます。

なお、この「日常」とは「毎日のように」という意味ではなく「定期的な」という意味と考えてください。

指針第12条第2項第3号の「健康の保持増進のための活動の実施に関する事項」には、事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年9月1日健康保持増進のための指針公示第1号)及び労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第33号)に基づき実施される職場体操、ストレッチ、腰痛予防体操、ウォーキング、メンタルヘルスケア等の取組があげられます。


指針第12条第2項第4号の「健康教育」には、生活習慣病予防、感染症予防、禁煙、メンタルヘルス等に係る教育があげられます。


⑤ 安全衛生計画を適切、かつ、継続的に実施する

指針

(安全衛生計画の実施等)

第13条 事業者は、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施する手順を定めるとともに、この手順に基づき、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するものとする。

2 事業者は、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するために必要な事項について労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させる手順を定めるとともに、この手順に基づき、安全衛生計画を適切かつ継続的に実施するために必要な事項をこれらの者に周知させるものとする。

計画を確実に実施するためには、活動の手順が必要であり、○○手順書、〇〇規程、〇〇活動要領といった文書で作成されることが一般的です。


⑥ 安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を行う

指針

(日常的な点検、改善等)

第15条 事業者は、安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を実施する手順を定めるとともに、この手順に基づき、安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を実施するものとする。

2 事業者は、次回の安全衛生計画を作成するに当たって、前項の日常的な点検及び改善並びに次条の調査等の結果を反映するものとする。

日常的な点検とは機械設備の点検ではなく、安全衛生計画の実施や進捗状況等を把握することを指し、問題点があれば改善しますが、それらについての手順も定めておく必要があるという規定です。これも前項同様「〇〇手順書」等文書の形で作成されるのが一般的です。


⑦定期的に労働安全衛生マネジメントシステムについて監査や見直しを行い、点検及び改善を行う

指針

(システム監査)

第17条 事業者は、定期的なシステム監査の計画を作成し、第五条から前条までに規定する事項についてシステム監査を適切に実施する手順を定めるとともに、この手順に基づき、システム監査を適切に実施するものとする。

2 事業者は、前項のシステム監査の結果、必要があると認めるときは、労働安全衛生マネジメントシステムに従って行う措置の実施について改善を行うものとする。

労働安全衛生マネジメントシステムが効果的に運用されているか否かを把握し、課題を改善するのがシステム監査です。課題を見つけ出し、改善につなげる力量が監査員に求められます。

なお、第15条の日常的なシステムの点検に対し、一定の期間を定めて行うものであり、対象期間・監査対象・監査担当者・評価方法の決定など、必要な手順をあらかじめ定めておく必要があります。


⑧ ①-⑦を繰り返して、継続的(PDCA サイクル)に実施する

指針

(労働安全衛生マネジメントシステムの見直し)

第18条事業者は、前条第一項のシステム監査の結果を踏まえ、定期的に、労働安全衛生マネジメントシステムの妥当性及び有効性を確保するため、安全衛生方針の見直し、この指針に基づき定められた手順の見直し等労働安全衛生マネジメントシステムの全般的な見直しを行うものとする。

事業者が自ら労働安全衛生マネジメントシステムの全般的な見直しを行います。方針の表明と同様に、見直しも事業者の責任において実施するものです。

また、労働安全衛生マネジメントシステムが連続的、かつ、継続的に実施されるように次の事項も併せて行うこととされています。

①労働安全衛生マネジメントシステムに必要な要件を手順化し、明文化し、記録する(第8・9条)

②システム各級管理者の指名等体制の整備を行う(第7条)

③労働者の意見を反映させる(第6条)


 

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