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【第2章】2 労働安全衛生マネジメントシステム③

2-2 労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の概要 3)

3) 安全衛生マネジメントシステムの構築方法

システムの構築はゼロから始めることはありません。各事業場では安全衛生法令を遵守し、KY(危険予知)活動や4S活動のようなすでに実施している安全衛生活動をベースとし、次の手順で構築します。


①事業者による導入宣言

初めてシステムを導入する事業場は、事業者がキックオフを宣言します。事業場が一丸となって推進していく機運を高めましょう。

②体制の整備

システムを構築し、運用を推進する部署を決めます。一般には安全衛生部門がよいでしょう。また、システム各級管理者、リスクアセスメント担当者、内部監査者などシステム運用に必要な担当者を決めるとともに、研修やOJT等で人材も育成します。

③現状把握と構築

事業場が実施している安全衛生管理・活動に関する規程類、記録、実際の活動と指針で要求していることを比較します。指針で要求していることに対して足りない事項を補いシステムを構築していきます。

④システムの運用

事業者が安全衛生方針を表明し、労使で話し合い安全衛生目標を作成します。目標を達成するための安全衛生計画をたて、具体的に運用します。目標の達成度や活動の効果はシステム監査で評価し、必要があればシステムの改善を行います。

労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針に基づく構築のスケジュール

2-2 労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の概要 4)

4)指針改正のポイント

労働安全衛生規則第24条の2に基づく「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(以下、指針)」(平成11年労働省告示第53号)が令和元年7月1日に改正され、同日から適用されました。

今回のOSHMS指針改正の背景として、

①健康確保への関心の高まり

②ISO(JIS Q)45001 および JIS Q 45100 など新たな OSH規格の制定といった国内外の安全衛生に関する状況の変化があります。


(1)複数の事業場を一の単位とした運用

従前の指針では事業場ごとにシステム運用することを基本としていましたが、今回の改正により同一法人の複数の事業場を一つの単位として運用できることが明記されました。

飲食店や小売業といった多店舗展開では、各店舗が独自に安全衛生活動を行っているのではなく、本社の指導に従って活動していることが少なくありません。このような場合は、事業場となる各店舗が独立してシステムを運用するよりは、本社がシステムを定めて各店舗がそれを運用する方が実務的と考えられます。

この改正によって多店舗を展開している第三次産業においてもシステムの導入が促進され、労働災害の減少につながることが期待されます。

もちろん、製造業をはじめとする他の業種でも、同様に運用することが可能です。

ただし、法人が同一である複数の事業場を一の単位とした運用の場合は、次の点に注意してください。

1.本社の事業場のシステム各級管理者に加え複数の事業場を統括管理できる者をシステム各級管理者として本社などに配置することとなります。例えば、多店舗展開型企業の場合は、本社の経営層、安全衛生担当者、エリア担当者、各店長等がシステム各級管理者となることが考えられます。これにより本社が定めたシステムを各店舗で均一的に運用することが可能になります。

本社全体を統括するシステム各級管理者を配置する

2.OSHMSの運用範囲が事業場単位であるか、複数の事業場であるか、文書にて明確に定めることが必要です。


(2) 幅広い業種での導入・運用を明示

従前は「生産・製造部門、安全衛生部門等」としていましたがシステムが第三次産業を含めた幅広い業種で導入、運用されることを想定し、システム各級管理者が属する事業実施部門として「製造、建設、運送、サービス等の事業実施部門、安全衛生部門等」に改正されています。


(3) 化学物質リスクアセスメントの実施

平成28年の労働安全衛生法改正により化学物質のリスクアセスメントが義務化され、労働安全衛生法第57条の3第3項の規定に基づく「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に従ってリスクアセスメントを実施することとされたことを踏まえ、システムにおいても実施すべき事項として追記されました。


(4) 健康の保持増進のための活動の実施

近年の心身の健康の確保・増進の関心の高まりを背景として、安全衛生計画に含むべき事項として次の2点が追加されました。

1.「健康の保持増進のための活動の実施に関する事項」

2.現行の安全衛生教育に加えて「健康教育の内容及び実施時期に関する事項」

2-2 労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の概要 5)

5)指針とISO45001及びJISQ45100について

①ISO45001とJISQ45001

平成30(2018)年3月、ISO45001が発行されました。国際規格のISO45001は各国の状況を考慮して作成が進められたため、どのような国でも活用できるよう大きな枠組みのみを示したものとなっています。(ISO45001はISO9001やISO14001と用語の統一がなされ、一体的な運用が可能となっています)

ISO45001を和訳しJIS(日本産業規格:制定時は日本工業規格)としたものがJISQ45001であり、ISO45001とJISQ45001は国際的に同等とみなされています。ISO(JISQ)45001と表記されることもあり、認証規格としても活用されています。


②JISQ45100作成の背景

一方、日本独自の安全衛生活動とISO45001を一体で運用することで安全衛生水準の一層の向上が期待できることから、これらの安全衛生活動を取り入れた日本版マネジメント規格(JISQ45100)の作成が進められ、2018年9月に制定されました。JISQ45100のイメージは、ISO(JISQ)45001と厚生労働省の労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針を足し合わせたものと考えることができます。

したがって、JISQ45100を運用することにより、国際性のあるISO(JISQ)45001とOSHMS指針を両立して運用することが可能となります。


 

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