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ヒヤリ・ハットを集めたあと、どう使う?

ヒヤリ・ハット活動を始めると、いろいろな報告が集まってきます。

「床で滑りそうになった」
「荷物が落ちそうになった」
「機械に手を挟みそうになった」
「フォークリフトと接触しそうになった」

ところが、報告書を集めて一覧表にしたところで、活動が止まってしまうことがあります。

ヒヤリ・ハットは、集めること自体が目的ではありません。

その情報から職場にある危険を見つけ、必要な対策につなげることで初めて活きてきます。

ここでは、当協会の「安全管理者選任時研修」テキストと厚生労働省などの資料をもとに、集めたヒヤリ・ハットをそのあとどう使うかを考えてみます。

「集めた」で終わっていない?

当協会の安全管理者選任時研修テキストでは、ヒヤリ・ハット活動について、作業者が経験したことを報告しやすくする工夫が必要だとしています。

しかし、もう一つ大切なことがあります。

報告された情報を、災害の防止につなげる仕組みを作る。

報告件数を増やすことだけでなく、集まった情報をどう処理するかまで考えておく必要があります。

例えば、毎月20件のヒヤリ・ハットが集まっても、

報告を集める
↓
一覧表にする
↓
保存する

だけでは、危険な状態は何も変わっていないかもしれません。

まず、その場所を確認する

報告を読んだだけでは、状況がよく分からないことがあります。

例えば、

「通路で滑りそうになった」

という報告があったとします。

これだけでは、

床が濡れていたのか 油が付着していたのか
段差があったのか 履物に問題があったのか
照明が暗かったのか 荷物で足元が見えなかったのか

までは分かりません。

そこで、必要に応じて実際の場所や作業を確認します。

報告者の話も聞きながら、何が起きそうだったのか、どのような条件が重なっていたのかを確認します。

全部を同じように扱わない

ヒヤリ・ハットには、さまざまなものがあります。

「少しつまずきそうになった」というものもあれば、一歩違えば死亡災害になっていた可能性があるものもあります。

そのため、集まった報告を単純に受付順で処理するのではなく、優先順位を考えることも必要です。

もし事故になっていたら、どの程度の被害だった?
↓
同じことがまた起きそう?
↓
すぐ対策した方がよいものはどれ?

平成29年度厚生労働省委託事業の調査に基づく資料でも、ヒヤリ・ハットが報告されると現場を確認し、危険の程度や想定される事故の重大性、対策の緊急性などを判断して、優先順位をつけて対策している事業場の例が紹介されています。

「けがをしなかったから軽い」とは限りません。

たまたま人がいなかった、たまたま荷物が当たらなかった、たまたま機械が止まっただけなら、結果ではなく起こり得た事故も見て判断します。

似たヒヤリ・ハットをまとめてみる

一件ずつ対策するだけでなく、ある程度報告が集まったら、似た事例をまとめて見ることもできます。

分け方の例 見えてくること
事故の型 転倒、墜落、はさまれなど、どの種類が多いか
場所 同じ通路、設備、作業場所に集中していないか
作業 清掃、運搬、点検など特定の作業で多くないか
時間帯・状況 作業開始時、終了間際、繁忙時などに偏っていないか

一件だけでは「たまたま」に見えたことでも、並べてみると同じ場所や同じ作業で何度も起きていることがあります。

1件を見るだけでは分からないことがある

ヒヤリ・ハットを蓄積すると、職場のどこに危険が繰り返し現れているかを見る材料にもなります。

対策は「注意する」だけにしない

ヒヤリ・ハットの報告を受けると、

「今後は気をつけてください」

で終わってしまうことがあります。

注意喚起や教育が必要な場合もありますが、その前に危険そのものを減らせないかも考えてみます。

ヒヤリ・ハット 考えてみること
床で滑りそうになった 床の材質、漏れ・飛散の防止、清掃方法、履物などを変えられないか
荷物が落ちそうになった 置き方、棚、落下防止、保管方法を変えられないか
機械に手を挟みそうになった ガード、安全装置、作業方法、停止方法を見直せないか
人と車両が接触しそうになった 通路の分離、動線、見通し、誘導方法などを変えられないか

※上の対策は考え方の例です。実際には現場を確認し、その職場の危険性に応じて対策を検討します。

対策したら、報告した人にも返す

ヒヤリ・ハットを報告しても、その後どうなったのか分からない。

これが続くと、

「報告しても何も変わらない」

と思われてしまうかもしれません。

そこで、対策をしたら、何を確認し、どう対応したのかを職場へ返すことも大切です。

ヒヤリ・ハットを報告
↓
現場を確認
↓
対策を検討・実施
↓
結果を共有
↓
同じことが起きていないか確認

こうした流れが見えると、報告した情報が実際の改善につながっていることも分かります。

「誰がやったか」だけを追わない

ヒヤリ・ハット活動で大切なのは、危険を見つけることです。

報告した人や、ヒヤリとした人を責めることが中心になってしまうと、報告しにくくなる可能性があります。

当協会のテキストでも、ヒヤリ・ハット活動を有効に行うには、作業者が経験を報告しやすくする工夫が必要だとしています。

そのため、

誰が危ないことをした?
よりも
どんな危険があった?

に目を向けます。

全部を「重要案件」にしない

報告を増やそうとすると、件数も増えてきます。

その一件一件について大がかりな会議や分析をしていては、活動そのものが続かなくなることもあります。

例えば、

対応 例
その場で対応 通路上の障害物を除く、表示を直すなど、すぐ改善できるもの
担当者が確認 設備、作業方法などを確認してから対策を決めるもの
優先して検討 重大な事故につながる可能性があるもの、繰り返し報告されているもの

のように、対応方法を分けることもできます。

※上の区分は法令等で定められたものではなく、ヒヤリ・ハット情報を処理するための一例です。事業場の規模や業務内容に合わせて運用します。

集めた情報を「次の活動」に使う

ヒヤリ・ハットは、それだけで完結させる必要はありません。

例えば、集まった事例を、

朝礼やTBMの話題にする KY活動の題材にする
安全パトロールの確認項目にする リスクアセスメントの危険源を探す材料にする
作業手順を見直す材料にする 職場内の教育事例として共有する

といった使い方もできます。

ヒヤリ・ハットは「報告書」ではなく情報源

一件の報告を処理するだけでなく、KY、パトロール、リスクアセスメント、作業手順、教育などへつなげると、同じ情報をさまざまな形で活用できます。

ヒヤリ・ハットを集めたあとに確認してみる

確認してみること 確認
報告された場所・作業を必要に応じて確認した □
重大な事故につながる可能性がないか確認した □
すぐ対応すべきものの優先順位を考えた □
似た報告が繰り返されていないか確認した □
「注意する」以外の対策も検討した □
実施した対策を報告者や職場へ共有した □
対策後に同じヒヤリ・ハットが起きていないか確認した □
KY・パトロール・リスクアセスメントなどに活用できないか考えた □

ヒヤリ・ハットを集めることは、危険を見つける入口です。

そのあと、現場を確認し、必要な対策を行い、結果を職場へ返す。

さらに、同じような報告をまとめて見ることで、一件の出来事ではなく、職場に繰り返し現れている危険が見えてくることもあります。

集めることより、集めたあとに何が変わったか。

そこまでを見ることで、ヒヤリ・ハット活動を日々の改善につなげることができます。

講習テキストでも確認できます

当協会の「安全管理者選任時研修」テキストでは、各種安全活動の一つとしてヒヤリ・ハット活動を紹介しています。

ヒヤリ・ハットを報告しやすくする工夫とともに、報告された情報を災害防止につなげる仕組みを作ることの必要性を解説しています。

▶ 安全管理者選任時研修「ヒヤリ・ハット活動」を見る

公的なヒヤリ・ハット事例を見る

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、さまざまな場面で発生したヒヤリ・ハット事例がイラスト付きで公開されています。

自社で報告された事例だけでなく、似た作業や危険がないかを探す教材としても利用できます。

▶ 職場のあんぜんサイト「ヒヤリ・ハット事例」を見る

災害事例の活用方法も確認できます

実際に起きた労働災害事例を、原因分析や職場教育に使う方法については、こちらで紹介しています。

▶ 労働災害事例を「見る」から「使う」へ


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