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厚労省の実施例を自社の作業に置き換えてみる

リスクアセスメントを始めようとしても、

自分たちの職場では、どう書けばいい?

というところで止まってしまうことがあります。

そんなときに参考になるのが、厚生労働省などが公開しているリスクアセスメントの実施例です。

ただし、実施例に書かれている点数や対策をそのまま自社の表へ写せばよいわけではありません。

作業場所、設備、作業方法、人の動き、すでに行っている対策などが違えば、同じような作業でもリスクは変わります。

今回は、厚生労働省が公開している実施例を参考にしながら、自社の似た作業へどう置き換えるかをやってみます。

実施例は「答え」ではなく「見本」

厚生労働省のリスクアセスメント資料には、さまざまな作業について、

  • どのような危険があるか
  • どのような災害が起こるおそれがあるか
  • リスクをどう見積もったか
  • どのような対策を考えたか
  • 対策後のリスクをどう見積もったか

といった実施例が掲載されています。

参考になるのは、一つ一つの点数そのものより、危険を見つけて対策につなげる考え方です。

実施例から借りるのは「数字」ではなく「見方」

他社の実施例と自社では、設備や作業条件、作業頻度、既存対策などが異なります。実施例を参考にするときは、点数や対策をそのまま転記するのではなく、「何を危険として見ているか」「どのように対策を考えているか」を参考にします。

厚生労働省の実施例を一つ見てみる

厚生労働省が公開している産業廃棄物処理業向けのリスクアセスメント資料には、重機作業の例があります。

その中には、重機の運転者から作業者が見えにくくなり、旋回する重機と作業者が接触する危険について検討した例があります。

対策としては、作業区域と重機の運行区域を色分けして区分することなどが示されています。

※ここでは厚生労働省の実施例を要約して紹介しています。実施例の詳細やリスクの見積りについては、記事末尾の厚生労働省資料で確認できます。

自社に同じ重機がなくても使える

ここで、

うちには同じ重機がないから関係ない

と考える必要はありません。

機械の名前ではなく、どんな危険がある事例なのかを見てみます。

重機から作業者が見えにくい
↓
人と機械の動線が重なる
↓
接触・激突するおそれがある

こう分解すると、自社にも似た作業がないか探しやすくなります。

例えば、フォークリフト作業に置き換える

自社では重機を使っていなくても、倉庫や工場でフォークリフトを使っているとします。

例えば、

自社で見つけた似た状況

フォークリフトで荷を運ぶ通路を、作業者も横断している。棚や荷物によって互いが見えにくい場所もある。

これなら、厚生労働省の重機作業と機械は違っても、

  • 運転者から人が見えにくい
  • 機械と人の動線が重なる
  • 接触すると大きな災害につながる

という部分は似ています。

見るところ 厚労省の実施例 自社への置き換え例
作業 重機作業 フォークリフトによる運搬
危険の特徴 運転者から作業者が見えにくい 棚や荷物で歩行者が見えにくい
人との関係 重機と作業者の区域が重なる フォークリフト通路を人も横断する
起こり得る災害 重機との接触 フォークリフトとの接触

※右欄は厚生労働省が示した事例ではなく、公開されている実施例をもとに当協会で自社作業への置き換え方を示した例です。

まず「自社ではどうなっているか」を書く

似た危険を見つけたら、次に自社の状況を具体的に確認します。

例えば、

  • フォークリフトは一日に何回くらい通るか
  • 歩行者はどこを通るか
  • 交差する場所はいくつあるか
  • 棚や荷物で死角になっていないか
  • 通路は区分されているか
  • 一旦停止などのルールはあるか
  • 誘導が必要な場所はないか

などを現場で見ていきます。

実施例の状況を、そのまま自社の状況にしない

実施例は「似た危険を見つけるきっかけ」です。実際のリスクアセスメントでは、自社の設備、作業方法、人の動き、既存の対策を実際に確認して記載します。

危険を自社の言葉で書いてみる

実施例を参考にしながら、自社で起こりそうな災害を具体的に書きます。

例えば、

フォークリフトが荷を運搬しているとき、
棚によって歩行者が見えないため、
通路を横断してきた作業者と接触する

といった形です。

単に、

「フォークリフトは危険」

とするより、どんな状況で、何が起こるのかまで書いた方が、対策を考えやすくなります。

点数は実施例からコピーしない

ここは特に注意したいところです。

厚生労働省の実施例にリスクの点数やレベルが書かれていても、その数字を自社の表にそのまま使うわけではありません。

例えば同じフォークリフト作業でも、

職場A 職場B
歩行者と車両の通路が完全に分かれている 同じ通路を人と車両が使っている
見通しがよい 棚や荷物で死角がある
通行回数が少ない 一日に何度も交差する

では、リスクの見積りが同じになるとは限りません。

実施例から危険を探す。見積りは自社で行う。

リスクの頻度、可能性、重篤度などは、自社の実際の作業条件と現在行っている対策をもとに見積もります。

対策も一度、自社で考えてみる

実施例には対策も書かれています。

しかし、最初からその対策を答えとして読むのではなく、自社なら何ができるかを一度考えてみます。

今回のフォークリフトの例なら、

見る方向 考えてみること
動線そのもの 歩行者とフォークリフトの通路を分離できないか
交差する場所 横断場所を限定できないか
見通し 棚や荷物の配置を変えたり、ミラーなどで確認しやすくできないか
運行方法 一旦停止や確認位置を決められないか
作業時間 人が多い時間とフォークリフトの運行時間を分けられないか

※上記は対策の考え方を示すための例です。実際には現場の状況や設備、関係法令等を確認した上で対策を決定します。

そのあと、実施例と比べる

自社で危険と対策を考えたあとに、厚生労働省の実施例をもう一度見ます。

実施例から似た危険を見つける
↓
自社の作業に置き換える
↓
自社でリスクと対策を考える
↓
実施例と比べて、見落とした視点を確認

こうすると、実施例を単なる「記入見本」ではなく、自社では気づかなかった危険や対策を探す材料として使えます。

同じ業種の事例だけを探さなくてもよい

実施例を見るとき、自社と全く同じ業種を探したくなります。

もちろん、同じ業種の実施例があれば参考になります。

しかし、

  • 人と車両が交差する
  • 回転部分へ手が近づく
  • 高い場所で作業する
  • 重い物を人が運ぶ
  • 薬品が飛散する
  • 足元に段差や開口部がある

といった危険は、複数の業種に共通して存在します。

そのため、業種ではなく「危険の形」が似ている事例を探すという使い方もできます。

「同じ仕事」より「似た危険」を探す

機械や業種の名前が違っても、人と機械の動線、死角、挟まれ、墜落など、危険が生まれる仕組みが似ていれば、リスクアセスメントの参考にできます。

最後は、必ず自社の現場を見る

公開されている実施例は便利ですが、最後に見るべきなのは自社の実際の作業です。

紙の上では同じ作業に見えても、

  • 機械の配置
  • 作業者の人数
  • 作業する時間
  • 人や車両の動線
  • 設備の古さ
  • 作業者の経験
  • 現在行っている対策

などによって、実際のリスクは変わります。

実施例を入口にして、最後は現場を確認して自社のリスクアセスメントにします。

一つの実施例を使って確認してみる

確認してみること 確認
自社の作業に近い実施例を一つ選んだ □
機械の名前ではなく、どんな危険かを確認した □
自社に似た危険のある作業がないか探した □
実際の作業場所と作業方法を確認した □
自社で起こり得る災害を具体的に書いた □
実施例の点数をコピーせず、自社の条件で見積もった □
実施例の対策を見る前に、自社で対策を考えた □
最後に実施例と比較して、見落とした視点を確認した □

厚生労働省の実施例を見て、同じように表を埋めるだけなら、「記入例」として使うことになります。

一方で、そこに書かれている危険を分解し、

この危険、自社にもない?
↓
自社なら、どの作業で起こる?

と考えてみると、実施例を自社の危険を探すための教材として使うことができます。

講習テキストでも確認できます

当協会の「安全管理者選任時研修」テキストでは、危険性・有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の検討・実施について解説しています。

▶ 安全管理者選任時研修「リスクアセスメントの実施手順」を見る

▶ 安全管理者選任時研修「優先度の設定・リスク低減措置」を見る

▶ 安全管理者選任時研修「リスクアセスメント実施例」を見る

厚生労働省の実施例を見る

厚生労働省「職場のあんぜんサイト」では、リスクアセスメントの考え方とともに、職場改善の実施例や業種別の資料が紹介されています。

▶ 職場のあんぜんサイト「リスクアセスメント情報」を見る

今回取り上げた考え方の参考にした産業廃棄物処理業向けのリスクアセスメントマニュアルでは、作業ごとの危険性・有害性、リスクの見積り、低減措置案、対策後のリスクの見積りなどの実施例を見ることができます。

▶ 厚生労働省「産業廃棄物処理業におけるリスクアセスメントマニュアル」を見る

点数をつけた後の使い方も確認する

リスクを見積もったあと、優先順位を決め、対策を実施して、対策後のリスクまで確認する流れはこちらで紹介しています。

▶ リスクアセスメントは「点数をつけて終わり」ではない


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