メニューボタン

「本人に注意」で終わらせない―4Mで考える災害原因

労働災害が起きたあと、原因を調べてみると、作業者の行動に問題が見つかることがあります。

「確認しなかった」
「決められた手順を守らなかった」
「安全装置を無効にした」

こうした事実があれば、「本人に注意する」「もう一度教育する」という対策を考えるのは自然です。

しかし、そこで原因分析を終えてしまうと、なぜ、その行動が起きたのかという背景を見落とすことがあります。

ここでは、当協会の「安全管理者選任時研修」テキストで紹介している4Mによる災害分析を使って、「人の問題」に見える災害原因をもう少し広く見てみます。

「安全装置を無効にした」なら、本人が原因?

当協会のテキストでは、4Mによる災害分析を説明する例として、「安全装置を無効にした」という不安全行動を取り上げています。

ここだけを見ると、

安全装置を無効にした
↓
作業者の問題
↓
注意・教育をする

という流れになりやすいかもしれません。

もちろん、必要な指導や教育を行うことは重要です。

しかし当協会のテキストでは、このような場合にも、作業者の失敗や責任だけで捉えず、4Mのほかの要素も考慮して問題点を分析する必要があると説明しています。

「誰がやったか」が分かっても、「なぜ起きたか」が全部分かったとは限らない

人の行動だけでなく、機械設備、作業方法や作業環境、管理などにも関係する要因がなかったかを確認します。

4Mで、原因を見る方向を広げる

4Mでは、災害につながった要因をMan、Machine、Media、Managementの4つの視点から整理します。

4M 要因 見るところの例
Man 人的要因 忘却、危険感覚のずれ、省略行為、憶測判断、疲労、睡眠不足、コミュニケーションなど
Machine 機械要因 機械設備の設計上の欠陥、危険防護不良、人間工学的配慮不足、点検整備不良など
Media 環境要因
(ManとMachineをつなぐ媒体)
作業情報、作業動作、作業方法、作業空間、作業環境など
Management 管理要因 管理組織、規程・マニュアル、教育訓練、監督・指導、人員配置、健康管理など

例えば、「安全装置を無効にした」という事実が確認されたとしても、確認することは一つではありません。

「安全装置を無効にした」を4Mで見てみる

次の表は、原因を決めつけるためのものではありません。

実際に何が起きたのかを調べるとき、どんな方向から確認できるかという例です。

視点 確認してみること
Man 安全装置の役割を理解していたか。危険性をどの程度認識していたか。慣れや思い込み、疲労などの影響はなかったか。
Machine 機械設備の設計や危険防護に問題はなかったか。安全装置を無効にしやすい状態ではなかったか。点検・整備は適切だったか。
Media 作業方法や作業情報は適切だったか。無理な作業動作になっていなかったか。作業空間や作業環境に問題はなかったか。
Management 規程や作業手順は整備されていたか。必要な教育訓練は行われていたか。監督・指導は十分だったか。人員配置などに問題はなかったか。

※上の質問は、当協会テキストの4Mの項目をもとに、原因調査に活用するために整理した例です。実際の原因は、確認できた事実に基づいて判断します。

「本人が悪くない」とするための方法ではない

ここで誤解したくないのは、4M分析は作業者の行動を原因から外すための方法ではないということです。

作業者の行動に問題があれば、それもManの要因として確認します。

そのうえで、

本人がそうした
↓
なぜ、その行動が起きた?
↓
ほかにも改善できるところはない?

と見ていきます。

本人への教育や指導と、機械設備や作業方法、管理の改善はどちらか一方を選ぶものではありません。

原因の見方が変わると、対策も変わる

原因を「本人がルールを守らなかった」だけにすると、対策も人への働きかけが中心になりやすくなります。

原因として確認したこと 検討できる対策の例
必要な知識が十分でなかった 教育内容や教育方法を見直す
機械設備にも問題があった 機械設備の設計、危険防護、点検・整備などを見直す
作業方法や環境にも問題があった 作業方法、作業情報、作業空間・環境などを見直す
管理にも問題があった 規程・手順、教育訓練、監督・指導、人員配置などを見直す

※対策の例は一般的な考え方を示したものです。実際には、確認された原因に対応した対策を検討します。

「もっと注意する」以外の対策が出てくるか

原因を一方向から見ず、設備・作業・管理にも改善できるところがないかを見ることで、対策の選択肢も広がります。

「注意してください」が悪いわけではない

注意喚起や教育そのものが悪いわけではありません。

必要なルールを伝え、正しい作業方法を教育し、不安全な行動があればその場で是正することも必要です。

問題は、それだけで再発防止策が終わっていないかということです。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」でも、不安全行動によって発生する労働災害は、労働者の心構えや意識だけでは防止できないと説明されています。

不安全行動が、管理・監督の不徹底や設備・環境面の問題によって生じる場合もあるためです。

▶ 職場のあんぜんサイト「不安全行動」を見る

4Mは、4つの欄を埋めるためのものではない

4Mを使うときに大切なのは、Man、Machine、Media、Managementの4つすべてに、無理に原因を当てはめることではありません。

まず、災害に関係した事実を確認します。

そのうえで、一つの方向だけを見て原因を決めてしまっていないかを4Mで確認します。

4つの欄を埋める
ではなく
原因を一方向から見ない

厚生労働省の教材でも、不安全状態、不安全行動やヒューマンエラーなどの直接的な原因だけで災害を捉えると、その背景にある本質的な原因や改善すべき運用を見逃す可能性があると説明されています。

まず事実を確認してから4Mで見る

4Mの項目から先に原因を考えてしまうと、「きっとこうだったのではないか」という推測が入りやすくなります。

まず確認するのは、実際に何が起きたのかです。

① 起きたことを確認する
↓
② 事実と推測を分ける
↓
③ 関係する要因を4Mで見る
↓
④ 根本的な問題を考える
↓
⑤ 再発防止対策へつなげる

4Mは、最初から答えを決めるためのものではなく、事実をもとに、見落としている要因がないかを系統的に確認するために使います。

自分の職場の出来事でも試してみる

4Mによる見直しは、大きな労働災害が起きたときだけでなく、日常の作業で気になった出来事を振り返るときにも応用できます。

例えば、

決められた保護具を使用しなかった 機械を停止せずに調整しようとした
決められた通路を通らなかった 点検項目の一部を省略した

といった「本人に注意すれば終わりそうな出来事」があったときにも、一度4Mで見てみます。

なぜ、その行動になったのか。
人以外にも改善できるところはないか。

そこまで見ることで、同じことを別の人が繰り返す可能性を減らす対策につなげやすくなります。

4Mで確認してみる

確認してみること 確認
起きたことを事実と推測に分けた □
本人の行動だけで原因分析を終えていない □
Man(人的要因)を確認した □
Machine(機械要因)を確認した □
Media(環境要因)を確認した □
Management(管理要因)を確認した □
「注意・教育」以外にも改善できるところがないか考えた □

人の行動は、目に見えやすい原因です。

だからこそ、そこで分析を止めてしまいやすいところでもあります。

「本人がやった」という事実を確認したうえで、なぜその行動が起きたのか、ほかに関係した要因はなかったかを見る。

4Mによる災害分析は、そのための一つの方法です。

公開されている災害事例でも試せます

前のページでは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載されている労働災害事例を使って、4Mで原因を考える方法を紹介しています。

▶ 労働災害事例を「見る」から「使う」へ

講習テキストでも確認できます

当協会の「安全管理者選任時研修」テキストでは、Man、Machine、Media、Managementの4つの要因と、「安全装置を無効にした」場合の考え方を紹介しています。

▶ 安全管理者選任時研修「4Mによる災害分析」を見る

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」でも、不安全行動の背景には、管理・監督や設備・環境などが関係する場合があることを解説しています。

▶ 職場のあんぜんサイト「不安全行動」を見る


← 公的機関の関連資料へ戻る

このページをシェアする

講習会をお探しですか?

 

▲ページ先頭へ