段差・照明・作業姿勢を職場で点検してみる
高年齢者の労働災害対策というと、体力測定や健康管理を思い浮かべることがあります。
もちろん、本人の健康や体力を把握することも大切です。
ただ、その前に職場を歩いてみると、比較的すぐに確認できることがあります。
ちゃんと見える?
無理な姿勢になっていない?
今回は、厚生労働省の「高年齢者の労働災害防止のための指針」を参考に、段差・照明・作業姿勢の三つに絞って職場を点検してみます。
いつもの職場を、実際に働く人の位置から歩いて、見て、作業してみる。
それだけでも、改善できるところが見つかることがあります。
まず、いつもの動線を歩いてみる
点検するときは、会議室で図面だけを見るのではなく、実際に労働者が歩く場所をたどってみます。
例えば、
- 出入口から作業場所まで
- 作業場所から資材置場まで
- 作業場所から休憩場所まで
- トイレまでの通路
- 階段やスロープ
などです。
普段から使っている場所ほど、
と、危険に気づきにくくなることがあります。
点検1 段差を見る
最初は、通路や作業場所の段差を見てみます。
厚生労働省の指針では、階段への手すりの設置とともに、可能な限り通路の段差を解消することが示されています。
見るのは、大きな階段だけではありません。
- 床材の継ぎ目
- 敷居
- 配線やホース
- マットのめくれ
- 仮設の板
- 床面の小さな高低差
なども確認します。
「注意」の前に、なくせないか
段差を見つけると、黄色と黒のテープを貼ったり、「足元注意」と表示したりすることがあります。
それも一つの方法ですが、最初から表示だけで終わらせず、
と考えます。
厚生労働省の指針でも、段差や滑りやすい場所などの危険箇所を解消できない場合に、安全標識や掲示で注意喚起する考え方になっています。
本人への注意喚起より先に、危険そのものをなくしたり、設備で転倒しにくくしたりできないかを確認します。
段差と一緒に「滑り」も見る
歩く場所を見るなら、段差だけでなく床の滑りやすさも確認します。
例えば、
- 水がたまりやすい
- 油が飛ぶ
- 雨の日に濡れる
- 床材そのものが滑りやすい
- マットが動く
といった場所です。
厚生労働省の指針では、防滑素材の使用、防滑靴の利用、水分・油分を放置しないことなどが対策例として示されています。
点検2 照明を見る
次は、明るさです。
照明器具が付いているかではなく、
を確認します。
厚生労働省の指針では、視力や明暗の差への対応力の低下を前提として、通路を含めた作業場所の照度を確保するとともに、照度が極端に変化する場所や作業をできるだけなくすことが示されています。
管理者の目線だけで判断しない
点検する人には十分明るく見えていても、実際に作業する人には見えにくい場合があります。
例えば、
- 棚の影になっている
- 機械の裏側が暗い
- 階段の最初と最後が分かりにくい
- 屋外から屋内へ入ると急に暗くなる
- 照明はあるが、作業者自身の影ができる
といったことがあります。
点検するときは、実際に作業する位置まで移動して見てみます。
明るい場所から暗い場所へ移るところ、屋内と屋外の境目、階段の入口なども確認します。
単純な「明るい・暗い」だけではなく、明るさが急に変わる場所がないかを見るのもポイントです。
何が見えればよいかを考える
作業場所では、単に床が見えればよいとは限りません。
例えば、
- 機械の表示
- 操作ボタン
- 目盛り
- 小さな部品
- 注意表示
- 床面の凹凸
など、作業に必要なものが無理なく見えるか確認します。
パソコンなどを使う作業についても、厚生労働省の指針では、照明や画面の文字サイズ、必要な眼鏡の使用などによって適切な視環境を確保することが示されています。
点検3 作業姿勢を見る
三つ目は、作業姿勢です。
これは、実際にその作業をしてみないと気づきにくいところです。
例えば、
- いつも腰を曲げている
- 低い位置の物を繰り返し取る
- 腕を上げた状態で作業する
- 身体をひねって物を置く
- 遠くへ手を伸ばす
- 重い物を床から持ち上げる
といった作業がないか見てみます。
人に姿勢を直してもらう前に
腰を曲げて作業している人を見ると、
と言いたくなるかもしれません。
しかし、作業台そのものが低ければ、本人が気をつけても同じ姿勢になります。
そこで、
- 作業台を高くできないか
- 材料を手前に置けないか
- 床置きをやめられないか
- 作業対象物の向きを変えられないか
- 補助機器を使えないか
と考えます。
厚生労働省の指針でも、不自然な作業姿勢を解消するため、作業台の高さや作業対象物の配置を改善することが具体例として示されています。
無理な姿勢になっているなら、本人の姿勢だけでなく、作業台、物の位置、設備、仕事の流れまで確認します。
重い物は「持ち方」だけを教えない
重量物を扱う作業では、正しい持ち方を教育することも必要です。
一方で、その物を人が持つこと自体を減らせないかも考えます。
例えば、
- 台車を使う
- リフターを使う
- 一個当たりを軽くする
- 持ち上げる回数を減らす
- 床からではなく台の上から扱う
といった方法です。
厚生労働省の指針でも、補助機器によって人力取扱重量を抑えることや、身体機能を補助する機器を導入することが例として挙げられています。
作業姿勢だけでなく、作業スピードも見る
設備や姿勢が同じでも、仕事の速さによって身体への負担は変わります。
高年齢者の特性を考慮した作業管理として、厚生労働省の指針では、
- ゆとりのある作業スピード
- 無理のない作業姿勢
- 注意力や集中力を必要とする作業時間への配慮
- 身体的負担が大きい作業での定期的な休憩
などが示されています。
そのため、
というところまで見ることができます。
三つを別々に見ない
段差、照明、作業姿勢は、別々の問題に見えます。
しかし、実際の職場では重なっていることがあります。
例えば、暗い倉庫で、低い位置に置いた荷物を取り、段差のある通路を運ぶ作業なら、
という複数の要因が一つの作業の中にあります。
一か所だけ直すのではなく、作業全体を通して見ることが大切です。
点検したら、優先順位をつける
職場を歩くと、改善したいところがいくつも見つかるかもしれません。
全部を一度に直せない場合は、危険の大きさなどを踏まえて優先順位を考えます。
厚生労働省の指針でも、高年齢者の特性やリスクの程度を考慮し、事業場の実情に応じて優先順位をつけて改善することが示されています。
職場を一周して確認してみる
| 確認してみること | 確認 |
|---|---|
| 通路に不要な段差がない | □ |
| 配線・ホース・マットなどがつまずきの原因になっていない | □ |
| 階段などに必要な手すりがある | □ |
| 床に水や油が放置されていない | □ |
| 実際に歩く位置から段差や床面が見える | □ |
| 通路や作業場所に必要な明るさがある | □ |
| 明るさが急に変化する場所がない | □ |
| 機械の表示や作業対象物が無理なく見える | □ |
| 腰を大きく曲げ続ける作業がない | □ |
| 腕を上げ続けたり、遠くへ手を伸ばしたりする作業がない | □ |
| 作業台の高さや物の配置を改善できないか確認した | □ |
| 人が持たなくてもよい重量物がないか確認した | □ |
| 無理な作業スピードになっていない | □ |
| 身体的負担の大きい作業では休憩を取れる | □ |
管理者だけでは気づかない不便さや、「ここは見えにくい」「この位置だと腰がつらい」といった情報を実際に作業する人が持っていることがあります。
高年齢者だけの点検にしない
今回の点検は、高年齢者対策を入口にしています。
しかし、
- 段差をなくす
- 見やすくする
- 無理な姿勢を減らす
- 重量物の人力取扱いを減らす
といった改善は、年齢を問わず多くの労働者にとって働きやすい環境につながります。
高年齢者が働きにくい場所は、他の人にとっても余裕の少ない場所かもしれません。
前の記事も確認する
高年齢者の転倒を、本人の身体機能だけでなく職場環境や作業方法から考える方法はこちらで紹介しています。
厚生労働省の指針を見る
2026年4月1日から、「高年齢者の労働災害防止のための指針」が適用されています。
段差、照明、滑り、重量物取扱い、作業姿勢、作業スピード、休憩などについて具体的な対策例が示されています。
高年齢者向けの職場改善資料を見る
厚生労働省では、高年齢者の労働災害防止対策や、職場改善に利用できる資料をまとめて公開しています。
安全管理者選任時研修でも確認できます
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