実戦編 第7章:届出書類の書き方
本章のポイント
様式第3号、第6号等の届出書類の記入方法と提出手順を解説します。
- 届出が必要な書類の全体像
- 様式第3号の書き方(選任報告)
- 様式第6号の書き方(労働保険成立届)
- 定期健康診断結果報告書の書き方
- 労働保険番号の確認方法
- 提出方法と期限管理
- よくある記入ミスと対策
- 電子申請(e-Gov)の活用
1. 届出が必要な書類の全体像
⚠️ 重要ポイント
労働安全衛生関係の届出は、提出期限が厳格です。
特に選任報告(様式第3号)は選任から14日以内の提出が義務付けられており、違反時は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
主な届出書類一覧
| 様式名 | 届出内容 | 提出期限 | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 様式第3号 | 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任報告 | 選任から14日以内 | 所轄労働基準監督署 |
| 様式第4号 | 安全衛生推進者・衛生推進者の選任報告 | 選任から14日以内 | 所轄労働基準監督署 |
| 定期健康診断結果報告書 | 定期健康診断の実施結果 | 遅滞なく(実施後速やかに) | 所轄労働基準監督署 |
| 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書 | ストレスチェックの実施結果 | 年1回(実施後速やかに) | 所轄労働基準監督署 |
| 労働者死傷病報告 | 労働災害の発生報告 | 休業4日以上:遅滞なく 休業4日未満:四半期ごと |
所轄労働基準監督署 |
届出不要なケース
- 安全衛生推進者・衛生推進者:選任は義務だが、労働基準監督署への届出は不要(ただし、社内での選任記録は必須)
- 50人未満の事業場:多くの届出義務が免除される
2. 様式第3号の書き方(選任報告)
様式第3号は、安全管理者、衛生管理者、産業医、総括安全衛生管理者の選任を報告する最も重要な届出書類です。
様式第3号の対象となる選任
- 総括安全衛生管理者
- 安全管理者
- 衛生管理者
- 産業医
記入項目の詳細解説
| 記入欄 | 記入内容 | 記入例・注意事項 |
|---|---|---|
| 労働保険番号 | 14桁の労働保険番号 | 例:1234-567890-1 労働保険概算・確定保険料申告書に記載 |
| 事業の名称 | 会社名または事業場名 | 例:株式会社○○製作所 法人格(株式会社等)も含める |
| 事業の所在地 | 事業場の所在地 | 例:東京都渋谷区○○1-2-3 本社と工場が別の場合は工場の住所 |
| 事業の種類 | 日本標準産業分類に基づく業種 | 例:製造業(金属製品製造業) 具体的な業種名を記載 |
| 労働者数 | 常時使用する労働者数 | 例:120人 派遣労働者も含む |
| 選任区分 | 該当する職務にチェック | □総括安全衛生管理者 □安全管理者 ☑衛生管理者 □産業医 |
| 氏名 | 選任された者の氏名 | 例:山田 太郎 フリガナも記入 |
| 生年月日 | 選任された者の生年月日 | 例:昭和55年4月1日 和暦で記入 |
| 資格 | 選任の根拠となる資格 | 衛生管理者:第一種衛生管理者免許 産業医:産業医研修修了 |
| 選任年月日 | 実際に選任した日 | 例:令和6年4月1日 辞令書の日付と一致させる |
| 専属・専任の別 | 専属の場合は「専属」と記入 兼任の場合は空欄 |
1,000人以上の事業場等で専属が必要 |
記入例(衛生管理者の場合)
総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告
労働保険番号: 1234-567890-1
事業の名称: 株式会社○○製作所
事業の所在地: 東京都渋谷区○○1-2-3
事業の種類: 製造業(金属製品製造業)
労働者数: 120人
選任区分:
- □ 総括安全衛生管理者
- □ 安全管理者
- ☑ 衛生管理者
- □ 産業医
氏名: ヤマダ タロウ 山田 太郎
生年月日: 昭和55年4月1日
資格: 第一種衛生管理者免許
選任年月日: 令和6年4月1日
専属・専任の別: (空欄)
事業者職氏名: 代表取締役 鈴木 一郎 印
⚠️ よくある記入ミス
- 労働保険番号の桁数違い:14桁すべてを正確に記入(ハイフンも含む)
- 選任年月日の誤り:「50人到達日」ではなく「実際の選任日」を記入
- 資格欄の記入漏れ:具体的な資格名(第一種衛生管理者など)を記入
添付書類
様式第3号と一緒に提出する書類:
- 資格証明書のコピー:衛生管理者免許証、産業医研修修了証など
- 選任を証明する書類:辞令書のコピー、または取締役会議事録のコピー
3. 様式第6号の書き方(労働保険成立届)
注意
様式第6号は、労働保険(労災保険・雇用保険)の成立届であり、労働安全衛生法ではなく労働保険法に基づく届出です。
事業を開始した際に提出する書類で、通常は社会保険労務士が手続きを代行します。
この章では参考情報として概要のみを説明します。
提出が必要なケース
- 新規に事業を開始した場合
- 労働者を初めて雇用した場合
提出期限
保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
主な記入項目
- 事業の名称・所在地
- 事業の種類(日本標準産業分類)
- 労働保険番号(ハローワークまたは労働基準監督署で付番)
- 保険関係が成立した年月日
- 雇用保険の適用の有無
4. 定期健康診断結果報告書の書き方
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、定期健康診断の結果を労働基準監督署に報告する義務があります。
⚠️ 報告義務
定期健康診断を実施したら、遅滞なく(実施後速やかに)報告書を提出する必要があります。
一般的には、健康診断実施後1~2か月以内に提出します。
記入項目の詳細
| 記入欄 | 記入内容 | 記入例・注意事項 |
|---|---|---|
| 労働保険番号 | 14桁の労働保険番号 | 様式第3号と同じ |
| 事業の名称・所在地 | 会社名と事業場の住所 | 様式第3号と同じ |
| 在籍労働者数 | 報告時点の常時雇用労働者数 | 例:120人 |
| 定期健康診断実施人数 | 今回の健診を受診した人数 | 例:115人 |
| 有所見者数 | 何らかの異常所見があった人数 | 例:45人 検査項目ごとに集計 |
検査項目別の記入
報告書には、以下の検査項目ごとに有所見者数を記入します:
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
✅ 記入のコツ
- 健診機関から提供される集計データをそのまま転記する
- 有所見者数は「異常なし」以外の人数(要観察、要精密検査、要治療すべて含む)
- 未受診者は「在籍労働者数」には含むが「実施人数」には含まない
5. 労働保険番号の確認方法
すべての届出書類で必要となる労働保険番号の確認方法を解説します。
労働保険番号とは?
労働保険番号は、事業場ごとに付与される14桁の番号です。
労働保険番号の構成
1234-567890-1
- 1234: 府県・所掌・管轄番号(4桁)
- 567890: 基幹番号(6桁)
- 1: 枝番号(1桁)
労働保険番号の確認方法
✓ 確認方法チェックリスト
⚠️ 注意事項
- 同じ会社でも、事業場(工場、支店など)ごとに異なる労働保険番号が付与されます
- 労働保険番号は、雇用保険番号とは異なります(混同しないよう注意)
6. 提出方法と期限管理
提出方法の3つの選択肢
| 提出方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 窓口持参 | その場で受付印がもらえる 不備があれば即座に修正可能 |
労働基準監督署まで行く手間 受付時間が限定される |
| 郵送 | いつでも送付できる 複数の書類をまとめて送れる |
到着確認ができない 受付印をもらうには返信用封筒が必要 |
| 電子申請(e-Gov) | 24時間いつでも提出可能 郵送費用がかからない 到達確認が即座に可能 |
電子証明書の取得が必要 システムに慣れるまで時間がかかる |
郵送時の注意点
- 封筒の表に「労働安全衛生関係届出書在中」と記載
- 特定記録郵便または簡易書留で送付(配達記録が残る)
- 副本を同封し、返信用封筒(切手貼付)を入れると受付印付きの副本が返送される
- 提出期限に余裕を持って発送(配達日数を考慮)
期限管理のコツ
✅ 期限を守るための管理方法
- カレンダーに期限を記入:選任日から14日後の日付を明記
- リマインダーを設定:スマホやPCのリマインダー機能を活用
- チェックリストを作成:提出すべき書類のリストを作り、提出済みにチェック
- 余裕を持った準備:期限ギリギリではなく、5日前までに準備完了を目指す
提出期限一覧(再掲)
| 書類名 | 提出期限 |
|---|---|
| 様式第3号(選任報告) | 選任から14日以内 |
| 定期健康診断結果報告書 | 遅滞なく(実施後1~2か月以内が目安) |
| ストレスチェック結果報告書 | 年1回(実施後速やかに) |
| 労働者死傷病報告(休業4日以上) | 遅滞なく(発生後速やかに) |
| 労働者死傷病報告(休業4日未満) | 四半期ごと(1月末、4月末、7月末、10月末) |
7. よくある記入ミスと対策
実務でよく発生する記入ミスと、その対策をまとめました。
❌ ミス1:労働保険番号の桁数違い
原因:労働保険番号は14桁だが、一部を省略して記入してしまった。
対策:
- 労働保険番号は必ず14桁すべて(ハイフンを含む)を記入
- 労働保険料申告書から転記する際は、一文字ずつ確認
❌ ミス2:選任年月日と提出日を混同
原因:「選任年月日」欄に、届出書の提出日を記入してしまった。
対策:
- 「選任年月日」は辞令書に記載された日付を記入(実際に選任した日)
- 提出日ではないことを明確に理解する
❌ ミス3:資格欄の記入が不十分
原因:「衛生管理者」とだけ記入し、第一種か第二種かを明記しなかった。
対策:
- 資格は正式名称で記入(例:第一種衛生管理者免許)
- 産業医の場合は「産業医研修修了」または「労働衛生コンサルタント」と記入
❌ ミス4:複数の選任を1枚の様式にまとめてしまった
原因:衛生管理者と産業医を同時に選任し、1枚の様式第3号に両方記入した。
対策:
- 選任者1人につき、様式第3号1枚が必要
- 複数人を同時に選任する場合は、人数分の様式を用意
❌ ミス5:事業場の所在地を本社住所で記入
原因:工場の選任報告なのに、本社の住所を記入してしまった。
対策:
- 選任された者が勤務する事業場の住所を記入
- 工場、支店などがある場合は、その所在地を正確に記入
❌ ミス6:専属・兼任の別の記入誤り
原因:専属が必要な規模なのに、空欄のまま提出してしまった。
対策:
- 常時1,000人以上(有害業務500人以上)の事業場では、専属が必要
- 専属の場合は「専属」と明記、兼任の場合は空欄
ミスを防ぐチェック体制
届出書を提出する前に、以下のチェック体制を確立しましょう:
- 作成者による自己チェック
- 上司または同僚によるダブルチェック
- チェックリストを使った確認(労働保険番号、選任年月日、資格欄など)
8. 電子申請(e-Gov)の活用
e-Gov(イーガブ)は、行政手続きをオンラインで行えるシステムです。労働安全衛生関係の届出も電子申請が可能です。
電子申請のメリット
- 24時間365日提出可能:労働基準監督署の営業時間を気にせず提出できる
- 郵送費用が不要:切手代や封筒代がかからない
- 到達確認が即座に可能:提出完了の通知がメールで届く
- 書類の保管が不要:電子データで保管できる
電子申請のデメリット
- 初期設定が複雑:電子証明書の取得、ソフトウェアのインストールが必要
- 慣れるまで時間がかかる:システムの操作方法を習得する必要がある
- すべての書類が対象ではない:一部の書類は電子申請に対応していない
電子申請の始め方
ステップ1
e-GovのWebサイトにアクセスし、利用者登録
ステップ2
電子証明書を取得(マイナンバーカードまたは商業登記電子証明書)
ステップ3
e-Gov電子申請アプリケーションをインストール
ステップ4
提出したい様式を検索し、必要事項を入力
ステップ5
電子署名を付与し、送信
電子申請に対応している主な様式
- 様式第3号(選任報告)
- 定期健康診断結果報告書
- 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(ストレスチェック)
- 労働者死傷病報告
電子申請のハードルが高い場合
電子申請の初期設定が難しいと感じる場合は、以下の対応も検討しましょう:
- 社会保険労務士に依頼:電子申請を含めた労務管理全般を委託
- まずは郵送で慣れる:届出に慣れてから電子申請に移行
- 労働基準監督署の窓口で相談:電子申請の方法を教えてもらう
e-Govの公式サイト:
e-Gov電子申請:https://shinsei.e-gov.go.jp/
次の章では、健康診断・ストレスチェックの発注・実施について解説します。
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