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化学物質のリスクアセスメントを実際にやってみる

化学物質のリスクアセスメントについて、

「SDSを見るところまでは分かった。
そこから実際に何をする?」

という方もいると思います。

化学物質のリスクアセスメントは、SDSに書かれている危険有害性を見るだけでは終わりません。

その化学品を、自分たちの職場でどのように使っているかまで確認して、リスクを見積もります。

今回は、一つの作業を例にして、化学物質のリスクアセスメントを最初から最後まで進めてみます。

この記事の作業例について

以下の作業条件は、リスクアセスメントの進め方を説明するために当協会で設定した例です。
特定の製品や事業場についてリスクを評価したものではありません。実際には、使用する製品のSDSと自社の作業条件を確認して実施してください。

今回の作業を決める

例えば、工場で次のような作業をしているとします。

今回の作業例

有機溶剤を含む洗浄剤をウエスに付けて、金属部品の汚れを手作業で拭き取っている。

ここで重要なのは、単に

「洗浄剤を使っている」

だけで考えないことです。

同じ洗浄剤でも、少量を屋外で短時間使う場合と、屋内で大量に長時間使う場合では、ばく露の程度は同じとは限りません。

法令で定められた措置がある場合

特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則などで措置が定められている物質・作業については、リスクアセスメントの結果にかかわらず、法令で定められた措置を実施する必要があります。

ステップ1 まずSDSを確認する

最初に、実際に使用している製品のSDSを確認します。

まず、

  • 製品名
  • 危険有害性
  • 含まれている化学物質
  • ばく露防止措置
  • 物理的・化学的性質
  • 有害性情報

などを確認します。

特にリスクの見積りでは、SDSの2・8・9・10・11項などの情報が使われます。

SDS確認すること
2項どのような危険性・有害性があるか
8項ばく露限界値、設備対策、保護具など
9項沸点、蒸気圧などの物理的・化学的性質
10項反応性や避けるべき条件など
11項吸入、皮膚、眼などへの有害性

この段階では、

この化学品は、何が問題になりそう?

という全体像をつかみます。

ステップ2 実際の作業条件を確認する

次に、SDSから離れて実際の作業を見ます。

今回の洗浄作業なら、例えば次のようなことを確認します。

確認すること今回の例
どのくらい使う?一回の作業で少量を使用
どんな作業?ウエスに付けて部品を拭く
どこで使う?屋内
換気は?全体換気はあるが、局所排気装置はない
どのくらいの時間?短時間の作業を繰り返す
どのくらいの頻度?ほぼ毎日
皮膚に触れる可能性は?ウエスを手で持つため、接触する可能性がある
現在の保護具は?保護手袋を使用
SDSだけではリスクは決まらない

SDSは化学品の危険性・有害性を教えてくれますが、自社で「何mL使うか」「何分作業するか」「換気があるか」までは分かりません。
そのため、SDSの情報と実際の作業条件を組み合わせて考えます。

ステップ3 どのようにばく露するか考える

今回の作業で、作業者が化学物質に触れる経路を考えます。

蒸気を吸い込む
+
液体が皮膚に付く
+
飛沫が眼に入る

などが考えられます。

化学物質の健康リスクでは、単に「有害な物質か」だけでなく、どの程度ばく露する可能性があるかを見ることが重要です。

ステップ4 リスクを見積もる

次に、危険性・有害性とばく露の程度を組み合わせてリスクを見積もります。

化学物質のリスクを見積もる方法には、さまざまな方法があります。

厚生労働省では、リスクアセスメントを支援するツールとして、CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)などを公開しています。

CREATE-SIMPLEでは、例えば、

  • 化学物質
  • 含有率
  • 取扱量
  • 作業時間
  • 作業頻度
  • 換気の状態
  • 作業方法
  • 保護具

などの条件を入力し、吸入や経皮吸収などのリスクを見積もることができます。

この記事ではリスクレベルを決めません

同じ洗浄作業でも、製品の成分や含有率、使用量、換気、作業時間などによって結果は変わります。
実際の製品のSDSと作業条件を使って見積もる必要があるため、ここでは特定のリスクレベルを示していません。

ツールを使わないといけない?

CREATE-SIMPLEは便利ですが、リスクアセスメントで必ずこのツールを使用しなければならないというものではありません。

厚生労働省では、

  • CREATE-SIMPLE
  • 検知管を用いる方法
  • 業種別のリスクアセスメントシート
  • 実測値を利用する方法
  • その他の支援ツール

など、複数の方法を紹介しています。

対象物質や作業内容、事業場の状況に応じて、適切な方法を選びます。

支援ツールは「見積り」を助けるもの

ツールで結果を出したところでリスクアセスメントが終了するわけではありません。
見積り結果をもとに、必要なリスク低減措置を検討します。

ステップ5 どうやってリスクを下げる?

リスクを見積もった結果、対策が必要だと判断したら、リスク低減措置を考えます。

化学物質では、いきなり

「マスクを着けよう」

だけで終わらせないことが重要です。

まず、より根本的な対策から考えます。

対策の方向今回の作業で考えてみること
物質を変えるより危険性・有害性の低い洗浄剤へ変更できないか
作業方法を変える洗浄剤を飛散・蒸発させにくい方法に変更できないか
設備で抑える局所排気や換気を改善できないか
管理方法を変える使用量を減らす、容器を開けたままにしないなどの作業方法を決められないか
保護具SDSやリスクアセスメントの結果をもとに、必要な保護手袋・眼の保護具・呼吸用保護具などを選定する

※上記は検討方法を示すための例です。実際の措置は、対象物質、作業条件、関係法令、SDS及びリスクアセスメント結果などを確認して決定します。

保護具より先に考えるものがある

化学物質のリスク低減では、危険性・有害性の低い物質への代替、設備による対策、作業方法などの管理的対策を検討したうえで、必要に応じて保護具を使用します。

より危険性・有害性の低い物質へ変更
↓
設備による対策
↓
作業方法などによる対策
↓
必要な保護具を使用

「保護具を使っているから大丈夫」ではなく、ばく露そのものを減らせないかから考えます。

ステップ6 対策したら、もう一度確認する

例えば今回、

  • 洗浄剤の使用量を減らした
  • 容器を開放したままにしないようにした
  • 換気を改善した
  • 作業方法を変更した
  • 適切な保護具を使用するようにした

とします。

そこで終わりではありません。

対策した結果、リスクは下がった?

を確認します。

必要に応じて、変更後の作業条件でもう一度リスクを見積もります。

それでもリスクが十分に下がらなければ、追加の対策を検討します。

濃度基準値が設定されている物質は?

リスクアセスメント対象物のうち、濃度基準値が設定されている物質があります。

その物質を屋内作業場で取り扱う場合には、労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とする必要があります。

数理モデルによる推定だけでなく、作業環境や作業内容によっては実際の濃度測定などを使ってばく露の程度を確認することもあります。

簡易ツールだけでは判断できない場合もある

CREATE-SIMPLEなどはリスクアセスメントを支援する便利な方法ですが、作業条件によっては実測など、より詳細な確認が必要になる場合があります。

ステップ7 結果を作業者へ伝える

リスクアセスメントを担当者だけで行い、結果をパソコンに保存して終わってしまっては、実際の作業は変わりません。

確認した危険性・有害性や、決めた対策について、実際に取り扱う労働者へ周知します。

例えば、

  • どのような危険性・有害性があるか
  • どの作業でばく露する可能性があるか
  • どのような作業方法に変更したか
  • 換気設備をどう使うか
  • どの保護具を、どう使用するか
  • 異常があった場合にどうするか

などです。

SDSを確認
↓
実際の作業条件を確認
↓
リスクを見積もる
↓
リスク低減措置を実施
↓
措置後のリスクを確認
↓
結果を記録・周知

実際に一つの作業で確認してみる

確認してみること確認
実際に使用している製品のSDSを入手した□
危険性・有害性を確認した□
使用量を確認した□
作業時間・頻度を確認した□
換気の状態を確認した□
吸入・皮膚・眼など、ばく露経路を確認した□
作業に合った方法でリスクを見積もった□
より有害性の低い物質への代替を検討した□
設備・作業方法による低減措置を検討した□
必要な保護具を確認した□
対策後のリスクを確認した□
結果と対策を記録し、作業者へ周知した□

難しそうに見えても、最初は一作業から

化学物質のリスクアセスメントというと、専門的な計算をするものに見えるかもしれません。

しかし、最初に行うことは、

何を使っている?
↓
どんな危険有害性がある?
↓
どのように使っている?
↓
どうすれば、もっとばく露を減らせる?

というところからです。

SDSと実際の作業を並べて見ると、「SDSを持っている」だけの状態から、その情報を使って作業を見直すところへ進むことができます。

厚生労働省の支援ツールを使う

厚生労働省「職場のあんぜんサイト」では、化学物質のリスクアセスメントについて、複数の支援ツールを公開しています。

CREATE-SIMPLEは、サービス業などを含め、幅広い業種で利用できる簡易なリスクアセスメント支援ツールです。

▶ 化学物質のリスクアセスメント実施支援を見る

▶ CREATE-SIMPLEについて確認する

SDSの見方から確認する

リスクアセスメントの前に、SDSのどこを確認すればよいか分からない場合は、こちらから確認できます。

▶ SDSをもらったら、まずどこを見る?

ラベルとSDSの使い分けも確認する

現場でラベルをどう使い、SDSをどのように詳しい確認へつなげるかは、こちらで紹介しています。

▶ ラベルとSDS、どう使い分ける?

化学物質管理者講習でも確認できます

当協会の「化学物質管理者講習(取扱事業場向け)」では、化学物質の危険性・有害性、ラベル・SDS、リスクアセスメント、リスク低減措置などについて学びます。

▶ 化学物質管理者講習(取扱事業場向け)を見る


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