公的教材を社内教育に使ってみる
社内で安全衛生教育を行おうとすると、
と思うことがあります。
しかし、厚生労働省などの公的機関では、安全衛生教育に利用できるさまざまな教材やツールを公開しています。
動画、リーフレット、労働災害事例、ヒヤリ・ハット事例、リスクアセスメント資料など、内容もさまざまです。
今回は、こうした公的教材を単に「見る」のではなく、自社の教育にどう使うかという視点から見てみます。
まず「職場のあんぜんサイト」を見てみる
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、安全衛生に関するさまざまな教材や情報がまとめられています。
例えば、
- 安全衛生教育用の動画
- 外国語の動画・教材
- 安全衛生関係のリーフレット
- 労働災害事例
- ヒヤリ・ハット事例
- リスクアセスメント関係資料
などがあります。
まず公的機関に使えそうな資料がないか探し、自社の教育目的に合うものを選ぶところから始めることができます。
教材を探す前に「何を教えたいか」を決める
教材がたくさんあると、
となりがちです。
しかし、先に教育の目的を決めると、教材を選びやすくなります。
例えば、
| 教えたいこと | 探す教材の例 |
|---|---|
| 新人に基本的な危険を知ってもらう | 安全衛生教育動画、リーフレット |
| 転倒について考えてもらう | 転倒防止資料、災害事例、ヒヤリ・ハット事例 |
| 危険を見つける練習をする | 災害事例、ヒヤリ・ハット事例 |
| リスクアセスメントを学ぶ | 実施例、解説資料、動画 |
| 化学物質の基本を学ぶ | 化学物質管理の教育用教材、動画 |
教材から教育を考えるのではなく、教育したいことから教材を探すという順番です。
動画は「見せて終わり」にしない
公的機関が公開している動画は、社内教育でも使いやすい教材です。
映像なら、文章だけでは説明しにくい作業や危険も伝えやすくなります。
ただし、動画を再生して、
とするだけでは、自社の仕事とのつながりが見えにくいことがあります。
動画を見たあとに、例えば、
- うちの職場にも同じ危険はないか
- 似た作業はどこにあるか
- 自社ではどんな対策をしているか
- 動画と自社の作業で違うところは何か
を確認すると、教材と実際の仕事をつなげることができます。
労働災害事例を教材にしてみる
「職場のあんぜんサイト」には、死亡災害や重大災害などについて、発生状況、原因、対策などを紹介した労働災害事例が多数掲載されています。
業種、事故の型、起因物などから事例を探すこともできます。
例えば、自社に似た作業の事例を一つ選んで、
と考えるだけでも、社内教育の題材になります。
「こんな事故がありました」で終わらせず、その事例を使って自分の職場を見るところまで進めると、教材の使い方が変わります。
ヒヤリ・ハット事例なら話しやすい
重大な労働災害だけでなく、ヒヤリ・ハット事例も教材として利用できます。
「職場のあんぜんサイト」では、さまざまな場面のヒヤリ・ハット事例がイラスト付きで公開されています。
例えば一つのイラストを見せて、
- どこが危ないと思うか
- 次に何が起こりそうか
- 自社にも似た場所がないか
- どうすれば防げるか
を話し合うことができます。
答えを先に説明するのではなく、まず参加者に考えてもらう使い方もできます。
※厚生労働省が公開するヒヤリ・ハット事例をKYT教材として指定しているという意味ではありません。上記は、公開事例を社内教育に活用する方法として当協会で整理した例です。
リーフレット1枚でも教育になる
安全衛生教育というと、長いテキストや何十分もの動画が必要なようにも感じます。
しかし、厚生労働省では、
- 転倒防止
- 交通労働災害
- 腰痛予防
- 熱中症
- 化学物質
- 各種安全衛生対策
などについて、リーフレットやパンフレットを公開しています。
例えば、朝礼や短時間のミーティングで1枚の資料を使い、
と確認する方法もあります。
教材の「一部分」だけ使う方法もある
50ページの資料を見つけたからといって、50ページすべてを教育する必要があるとは限りません。
自社の教育目的に合わせて、必要な箇所を選ぶ方法もあります。
例えば、
- イラストを一つ見る
- 災害事例を一つ読む
- チェックリストだけ利用する
- 動画の該当部分を見る
- 一つの図をもとに話し合う
といった使い方です。
たくさんの資料を説明するより、一つの資料から自社の作業について考える方が、目的に合う場合もあります。
化学物質には社内教育用の教材もある
厚生労働省では、化学物質管理について、社内安全衛生教育用のeラーニング教材も公開しています。
教材には、
- 化学物質管理の基本
- ラベル・SDS
- リスクアセスメント
- 健康障害防止
- 爆発・火災防止
- 災害対策事例
などを扱う動画教材が公開されています。
この教材については、厚生労働省が事業場内の安全衛生教育を目的とする範囲で、各事業場が自由に改変して利用できることを明記しています。
ただし、事業場内の安全衛生教育を目的とする範囲に限られ、利益を得る目的での教材の配布等については制限があります。
公的教材なら、何でも自由にコピーしていい?
ここは注意が必要です。
=何をしても自由
というわけではありません。
厚生労働省ホームページのコンテンツは、特記がない場合、現在は公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて利用できます。
利用する場合には、出典を記載し、編集・加工した場合はそのことも明示します。
また、第三者が権利を持つ写真やイラストなどや、個別に別の利用条件が設定されている教材もあります。
「見る」「リンクする」「社内で配布する」「一部を転載する」「編集して自社教材にする」では、利用方法が異なります。
実際に転載・加工するときは、掲載ページや利用規約を確認します。
出典を残しておく
公的教材を社内資料へ取り込む場合、出典を残しておくと、
- どこから入手した情報か分かる
- 後から最新版を確認できる
- 自社作成部分と公的資料を区別できる
という利点があります。
例えば、
https://www.mhlw.go.jp/……
のようにしておきます。
内容を編集した場合は、
など、加工したことが分かる形にします。
公的教材にも「作成された時期」がある
公的機関の資料だからといって、すべてが最新とは限りません。
法令や制度、基準などを説明する教材では、
- 作成年月
- 改訂年月
- 掲載ページの更新日
- 現在の法令との違い
も確認します。
特に、以前から保存しているPDFを毎年そのまま使っている場合は、最新版が公開されていないか確認した方がよいでしょう。
公的教材を「自社版」に近づける
公的教材は、多くの事業場で利用できるように作られています。
そのため、一般的な説明になっている部分もあります。
そこで、教材を見たあとに自社の情報を追加します。
例えば、
| 公的教材 | 自社で追加すること |
|---|---|
| 転倒防止 | 実際に滑りやすい場所、段差 |
| 機械災害 | 自社の機械の危険箇所、停止方法 |
| 化学物質 | 実際に使用する製品、SDS、保護具 |
| 緊急時対応 | 避難経路、連絡先、集合場所 |
一般的な知識は公的教材で確認し、最後に「では、うちではどうなっている?」へつなげると、実際の仕事に近い教育になります。
例えば、転倒を15分で扱うなら
※以下は、公的教材を社内教育に活用する方法として当協会で設定した例です。厚生労働省がこの教育方法を指定しているものではありません。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 厚生労働省の転倒防止資料を見る |
| 2 | ヒヤリ・ハット事例を一つ見る |
| 3 | 「うちで似た場所は?」と考える |
| 4 | 実際の危険箇所を確認する |
| 5 | 必要な改善を決める |
公的教材を「説明の材料」として使い、最後は自分たちの職場へ戻します。
法定教育とは分けて考える
公的教材は、社内教育に役立つものですが、教材を一つ見れば、すべての法定教育を実施したことになるとは限りません。
労働安全衛生法では、雇入れ時や作業内容変更時の安全衛生教育のほか、一定の危険・有害業務について特別教育が定められています。
特別教育については、対象業務ごとに法令で教育内容などが定められています。
したがって、
は分けて確認します。
法令に基づく教育として実施する場合は、対象者、教育内容、必要な科目などを別途確認します。
教育したあとに一つだけ確認する
教材を使ったあと、
だけで終わらせず、一つ具体的に確認してみます。
例えば、
- 今日の内容で、自分の仕事に関係するものは?
- 自分の作業で一番気になった危険は?
- 明日から変えられることは?
- 職場で確認したい場所は?
などです。
教材を覚えているかではなく、仕事と結び付いたかを確認します。
職場で確認してみる
| 確認してみること | 確認 |
|---|---|
| 教育の目的を決めてから教材を探している | □ |
| 厚生労働省などの公的教材を確認している | □ |
| 自社の業種・作業に近い教材を選んでいる | □ |
| 動画や資料を見せるだけで終わっていない | □ |
| 教材の内容を自社の作業に置き換えている | □ |
| 自社の設備・手順・危険箇所も一緒に確認している | □ |
| 教材の作成年月や改訂状況を確認している | □ |
| 転載・加工するときは利用条件を確認している | □ |
| 出典を残している | □ |
| 法定教育の場合は必要な教育内容を別途確認している | □ |
公的教材を「入口」にする
公的機関の教材には、専門家が作成した多くの情報が蓄積されています。
それを毎回事業場で一から作り直す必要はありません。
一方、公的教材が自社の機械や設備、作業方法まで知っているわけでもありません。
教材を探す目的は、資料を集めることではありません。
すでにある良い教材を使って、自分たちの仕事を考える時間をつくる。
公的教材は、そんな使い方もできます。
厚生労働省の教材・ツールを探す
「職場のあんぜんサイト」では、安全衛生教育動画や各種教材・資料がまとめて公開されています。
労働災害事例を探す
死亡災害や重大災害などについて、発生状況、原因、対策を紹介した事例を検索できます。
ヒヤリ・ハット事例を探す
さまざまな作業のヒヤリ・ハット事例が、イラスト付きで公開されています。
安全衛生関係のリーフレットを探す
厚生労働省では、転倒、交通労働災害、化学物質など、安全衛生に関する多数のリーフレットや資料を公開しています。
化学物質の社内教育教材を使う
化学物質管理については、事業場内の安全衛生教育に利用できるeラーニング用の動画教材が公開されています。
▶ 厚生労働省「化学物質管理に関する社内安全衛生教育用eラーニング教材」を見る
教材の利用条件を確認する
厚生労働省ホームページのコンテンツを転載・加工して利用する場合は、現在の利用条件や出典表示の方法を確認できます。
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