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安全装置を無効にした事故、本当に作業者だけの問題?

機械の安全カバーを外し、安全装置を無効にした状態で作業をして事故が起きた。

こう聞くと、

「安全装置を外した作業者が悪い」

と考えたくなるかもしれません。

実際、安全装置を無効にして作業したことは災害の重要な原因です。

しかし、そこで原因分析を終えてしまうと、「なぜ安全装置を外した状態で作業が行われることになったのか」が残ります。

今回は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載されている実際の労働災害事例を使って、作業者の行動だけではなく、その背景まで見てみます。

今回使うのは、パイローラーの清掃中に起きた事故

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、次の労働災害事例が掲載されています。

パイローラーの清掃中、
回転しているローラーに手を挟まれた事故

パン生地を伸ばすパイローラーの作業終了後、ローラーをタオルで清掃していたところ、右手をローラーに挟まれた事例です。

掲載されている発生状況によると、清掃時には安全カバーが取り外され、カバーのインターロック機能が無効になっていました。

さらに、ローラーを停止させず、回転している状態でタオルを使って清掃していました。

▶ 今回使用する労働災害事例を見る

まず、確認できる事実だけを見る

原因を考える前に、この事例に書かれていることを整理してみます。

確認するところ 掲載事例から確認できること
作業 パイローラーを使った作業終了後の清掃作業だった
機械の状態 ローラーは停止しておらず、回転していた
安全装置 安全カバーが取り外され、インターロック機能が無効になっていた
清掃方法 タオルでローラーを拭いていた
教育 店長から、ローラーを停止させた状態で清掃するよう口頭では教育されていた
作業手順 清掃作業についての作業手順書は作成されていなかった

「安全装置を外した」という事実だけではありません。

機械の状態、清掃方法、教育の方法、作業手順の整備状況まで確認できる事例です。

厚生労働省が挙げている原因は2つ

この事例について、「職場のあんぜんサイト」では原因として次のようなことが考えられるとしています。

原因 掲載されている内容の概要
1 清掃時に安全カバーを取り外してインターロック機能を無効にし、ローラーを停止させずに清掃作業を行ったこと
2 ローラーを停止して清掃するよう口頭で教育していたものの、作業手順書が作成されておらず、作業手順の遵守も徹底されていなかったこと

つまり、厚生労働省の事例そのものが、

作業者が行ったこと
+
作業手順・管理の問題

の両方を原因として挙げています。

「本人が悪い」で終えると、対策も一つになる

この事故を、

安全装置を外した作業者が悪かった

だけで終わらせると、再発防止策も、

「安全装置を外さないよう注意する」

だけになりやすくなります。

もちろん、安全装置を無効にしてはいけないことを教育・指導することは必要です。

しかし、次の人も同じ行動を取る可能性がないかまで考えるには、もう少し広く原因を見る必要があります。

4Mで見直してみる

当協会の「安全管理者選任時研修」テキストでは、労働災害の原因を分析する方法として4M分析を紹介しています。

4Mは、原因を次の4つの方向から見る方法です。

4M 見る方向
Man 人の判断、行動、知識、経験、疲労、コミュニケーションなど
Machine 機械・設備、安全装置、設計、配置、点検整備など
Media 作業方法、作業情報、作業姿勢、作業空間・環境など
Management 作業手順、教育、監督・指導、管理体制など

この事故を4Mで見ると、何を確認する?

ここからは、厚生労働省がこの事故を4Mで分類したものではありません。

以下は厚生労働省が4Mで分類したものではなく、公開された事実をもとに当協会で整理した例です。

視点 確認してみること
Man なぜローラーを停止せずに清掃しようとしたのか。安全カバーやインターロックの役割をどの程度理解していたのか。
Machine 安全カバーを取り外した状態でローラーを動かせる状態になっていたことについて、設備面から改善できるところはなかったか。
Media 清掃しやすい作業方法になっていたか。停止した状態で清掃する場合に、作業しにくさなどはなかったか。
Management 清掃作業の手順書はあったか。教育した内容が実際の作業で守られているか確認していたか。
4Mは「原因を追加する」ためのものではありません

実際に確認できる事実をもとに、ほかに関係する要因がなかったかを見落とさないための視点として使います。

「口頭で教えた」だけでは足りなかった

この事故では、店長は被災者に対して、ローラーを停止させた状態で清掃するよう口頭で教育していました。

つまり、まったく教育していなかったわけではありません。

それでも事故は起きました。

厚生労働省が原因として挙げているのは、作業手順書が作成されておらず、作業手順を守ることが徹底されていなかったことです。

「停止して清掃してください」と教えた
↓
実際の作業で守られている?
↓
手順・教育・確認まで見る

「教えたか」だけでなく、現場で実際にその方法が使われているかまで見る必要があります。

厚生労働省が示した対策も「注意」だけではない

この事故について、「職場のあんぜんサイト」は次の2つを対策として挙げています。

対策 内容の概要
1 パイローラーを清掃するときは、ローラーを停止した状態で作業させる
2 清掃作業について作業手順書を作成し、関係労働者へ周知・徹底する

つまり、

機械を停止して作業する
+
その方法を手順として決める
+
関係者へ周知し、徹底する

というところまでが再発防止対策になっています。

安全装置を無効にする事故は、この1件だけではない

「職場のあんぜんサイト」には、安全装置やインターロックを無効にした状態で発生した別の労働災害事例も掲載されています。

例えば、射出成形機の安全装置であるリミットスイッチを無効にした状態で作業し、手を挟まれた事例があります。

この事例では、安全装置を無効にしたことだけでなく、安全パトロールや作業開始前点検でその状態が指摘・改善されなかったことも原因として挙げられています。

▶ 安全装置を無効にした別の労働災害事例を見る

安全装置を外した人だけを見ると、「人の問題」に見えます。

しかし、なぜその状態が続いていたのかまで見ると、設備、作業方法、点検、監督など別の問題が見えてくることがあります。

自分の職場なら、どこを確認する?

この事例と同じパイローラーを使用していなくても、自分の職場に置き換えて考えることができます。

確認してみること 確認
安全カバーや安全装置を外したり無効にしたりして使用している機械はない □
清掃・調整・点検時の停止方法が決められている □
その作業について実際に使える作業手順がある □
教育した内容が実際の作業で守られているか確認している □
安全装置を無効にしないと作業しにくい状態になっていない □
点検や巡視で安全装置が有効に機能しているか確認している □

「なぜ外した?」まで見る

安全装置を外したという事実は、見逃してはいけません。

しかし、原因調査をそこで終わらせず、

安全装置を外した
↓
なぜ外した?
↓
なぜ、その方法で作業が続いていた?
↓
人以外にも変えられるところはない?

と考えていきます。

本人の行動を原因から外すのではありません。

本人の行動を確認したうえで、設備、作業方法、教育、手順、監督などにも改善できるところがなかったかを見る。

そうすることで、「次の人も同じことをする可能性」まで減らす対策につながります。

4Mについてもう少し確認する

前のページでは、労働災害事例を4Mで分析して使う方法を紹介しています。

▶ 労働災害事例を「見る」から「使う」へ

4Mで「本人に注意」以外の原因を考える方法については、次のページでも紹介しています。

▶ 「本人に注意」で終わらせない―4Mで考える災害原因

講習テキストでも確認できます

当協会の「安全管理者選任時研修」テキストでは、「安全装置を無効にした」という例を使って、作業者の失敗や責任だけでなく、4Mの他の要素も考慮して問題点を分析する必要があることを解説しています。

▶ 安全管理者選任時研修「4Mによる災害分析」を見る

公的な事例でも確認できます

今回紹介したパイローラーの事故は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載されている実際の労働災害事例です。

▶ パイローラー清掃中の労働災害事例を見る

不安全行動についての考え方は、「職場のあんぜんサイト」の安全衛生キーワードでも確認できます。

▶ 職場のあんぜんサイト「不安全行動」を見る


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