第6章:産業医の選任と実務
6-1 産業医とは
産業医は、労働者の健康管理を医学的専門知識に基づいて行う医師です。50人以上のすべての事業場で選任が義務づけられています。
産業医選任の基本
- 全業種で必須:業種に関わらず、50人以上の事業場で選任義務
- 医師免許保有者:産業医研修を修了した医師が対象
- 外部委託可能:自社従業員である必要はなく、外部の産業医と契約可能(嘱託産業医)
- 専属・嘱託の区分:規模により専属(常勤)か嘱託(非常勤)かが決まる
6-2 専属産業医と嘱託産業医の違い
| 区分 | 対象事業場 | 勤務形態 |
|---|---|---|
| 専属産業医 | 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場(一部の業種では常時500人以上) | 事業場に常勤し、専属で勤務する。原則として他の事業場との兼務不可 |
| 嘱託産業医 | 常時50人以上1,000人未満の事業場 | 非常勤。月に数回訪問し、健康管理業務を行う。複数の事業場を兼務可能 |
50~999人の事業場の場合
ほとんどの中小企業は嘱託産業医で対応します。月1~2回程度の訪問で、1回あたり2~4時間程度の勤務が一般的です。費用相場は月額5万円~15万円程度です。
6-3 産業医の資格要件
産業医になるためには、医師免許に加えて、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| ①産業医研修の修了 | 日本医師会または厚生労働大臣指定の機関が実施する産業医研修(50時間以上)を修了 |
| ②労働衛生コンサルタント試験合格 | 保健衛生区分の労働衛生コンサルタント試験に合格 |
| ③大学での専門課程修了 | 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授等 |
産業医の探し方
- 産業医紹介会社・サービス:多数の企業がサービスを提供。オンライン面談可能なものも
- 地域の医師会:各都道府県の医師会に産業医紹介の窓口がある
- 産業保健総合支援センター:都道府県労働局が運営。無料相談・紹介サービスあり
- 知人の医師:産業医資格を持つ知人の医師に依頼
6-4 選任の手続き
6-4-1 選任までの流れ
- 産業医候補の選定:紹介会社等を通じて候補者を探す
- 面談・条件交渉:勤務頻度、報酬、業務内容等を協議
- 契約締結:嘱託産業医契約書を締結
- 労働基準監督署への届出:選任後14日以内に報告書を提出
6-4-2 届出に必要な書類
- 産業医選任報告(様式第3号)
- 医師免許証のコピー
- 産業医研修修了証等のコピー
6-5 産業医の職務
| 職務内容 | 詳細 |
|---|---|
| 健康診断の実施管理 | 健康診断結果に基づく事後措置(就業上の措置の要否判定等) |
| 長時間労働者の面接指導 | 月80時間超の時間外労働者からの申出に基づく面接指導 |
| ストレスチェック後の面接指導 | 高ストレス者からの申出に基づく面接指導 |
| 職場巡視 | 原則月1回以上の職場巡視(条件を満たせば2ヶ月に1回も可) |
| 衛生委員会への出席 | 委員として委員会に出席し、専門的助言 |
| 健康相談 | 労働者からの健康相談への対応 |
⚠️ 2019年4月施行の改正内容
産業医の権限と独立性が強化されました。事業者は産業医に対して以下の情報を提供しなければなりません。
- 時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者の氏名と時間数
- 労働者の業務内容、労働時間に関する情報
- 産業医が求めた場合のその他の情報
6-6 産業医との契約のポイント
6-6-1 契約内容の確認事項
- 訪問頻度:月1回、月2回など
- 1回あたりの勤務時間:2~4時間が標準
- 報酬:月額固定報酬が一般的(時間給の場合もあり)
- 業務内容:職場巡視、面接指導、委員会出席など
- 緊急時の対応:労災発生時の対応等
- 契約期間:1年更新が一般的
6-6-2 費用の目安
| 事業場規模 | 訪問頻度 | 月額報酬の目安 |
|---|---|---|
| 50~100人 | 月1回(2~3時間) | 5万円~10万円 |
| 101~300人 | 月1~2回(3~4時間) | 8万円~15万円 |
| 301~500人 | 月2回(4~6時間) | 12万円~20万円 |
※地域や産業医の経験により変動します。大都市圏では相場が高くなる傾向があります。
6-7 産業医の活動を支援する体制
産業医が効果的に活動するために、事業者は以下の環境を整備する必要があります。
事業者が整備すべき事項
- 産業医への情報提供:労働時間、健康診断結果、職場の状況等
- 産業医室の設置:面談や診察ができる個室の確保(プライバシーを守れる空間)
- 産業医の意見の尊重:産業医の勧告・意見を尊重し、必要な措置を講じる
- 衛生管理者との連携:産業医と衛生管理者が協力して健康管理を行う体制
受講者様のご希望に合わせ、以下のタイプの講習会もご用意しています
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出張講習
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